NISA口座を開設する時に、どの会社で口座を開けばよいか悩む方は多いと思います。ここでは、NISA口を開設する際の金融機関を選ぶポイントと、その比較をご紹介します。
また、NISA口座を開設するときの注意点を知っていないと、「非課税になると思っていて取引していたが、利益に課税されてしまった」ということが起こり得ます。そこで、NISA口座を開設する前に知っておくべきポイントについてもご紹介します。
この記事を読めば、あなたに合ったNISA口座をスムーズに開設できるようになるので、ぜひNISA口座の開設を検討する方は目を通していただければと思います。
目次
1 NISA口座の特徴
それでは、まずはNISA口座の特徴についてご説明します。NISA口座を開設する前に、NISA口座を活用するメリットや注意点を確認しておきましょう。
1.1 NISAとは
「NISAって何?」と思っている人のために、まずはNISAの基本について説明しておきます。
NISAは、少額投資非課税制度とも呼ばれ、個人投資家の中長期の資産形成を応援する制度です。証券会社の総合取引口座とは別にNISA口座を開設し、取引をすれば、上場株式や株式投資信託などの売却益や配当金が、投資をした年から最長5年間非課税となります。口座開設が可能なのは2014年から2023年までとなっているため、興味のある方は早めに検討することが必要となります。
1.2 NISA口座のメリット
NISA口座を利用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。NISA口座を利用するメリットは、株式や投資信託の売却益や配当に課税がされないことです。
たとえば、これまでの総合取引口座で株式の配当金が10万円あったとすれば、おおよそ20%が課税(正確には、20.315%)され、投資家の手元に残るのは8万円となります。一方、この株式をNISA口座で取引した場合にはその配当については課税されず、投資家は10万円を手にすることができます。
また、NISA口座は少額から投資をすることができます。オンライン証券などで手軽に始められる積立投資のサービスを活用すれば、投資信託であれば毎月購入していくことが可能です。
1.3 NISA口座を開設するにあたっての注意点
一方で、NISA口座を開設するにあたっては注意点がいくつかありますので、そちらを見ていきましょう。NISA口座を開設してから「買いたい商品が買えなかった」ということが起きないように、必ずお読みください。
1.3.1 NISA口座は1人1口座までしか開設できない
NISA口座は1人1口座しか開設できません。理由は、1年間で利用できるNISA口座の1人当たりの非課税枠が決まっており、税務署が非課税枠の利用状況を管理しやすくするためです。毎年金融機関を変更することはできますが、どの金融機関でNISA口座を開設するのかよく考えてから開設しましょう。
1.3.2 NISA口座で取引することができる金融商品が限られている
NISA口座を利用する注意点は、対象となる取扱金融商品が限られていることです。NISA口座を活用する前に、自分が投資をしたい金融商品が対象となっているかどうかの確認が必要です。
NISA口座の対象となる取扱金融商品は、大きく分けると「上場株式(株式投資)」と「投資信託」で、「国債」や「FX」などは対象外となります。
対象となる金融商品 | 対象外の金融商品 |
---|---|
上場株式 (いわゆる株式投資) 公募株式投資信託 上場REIT (REIT:不動産投資信託) ETF (上場投資信託)など |
預貯金 債券 FX MMF / MRF 保険商品 上場していない株式 個人向け国債 先物取引など |
1.3.3 NISA口座で活用できる金額と期間に制限がある
NISA口座を利用することができる金額の上限や期間には制限があります。NISA口座で投資できるのは年間1人当たり120万円までです。また、一度NISA口座で投資した商品を継続して保有すれば、5年間まで利益が非課税となります。
NISA口座での上限金額と期間
出所:金融庁HPをもとに作成
たとえば、平成28年にNISA口座で110万円分の株を買い、保有し続ければ、平成32年まで配当金が非課税となります。
1.3.4 非課税枠の未使用分は翌年へ繰り越しできない
NISAでは、非課税枠の未使用分を翌年へ繰り越すことはできません。
たとえば、2016年にNISA口座で110万円の取引をした場合、余った10万円分の枠を翌年へ繰り越して2016年の非課税枠を130万円(=10万円+120万円)にすることはできません。2016年の非課税枠は、120万円となります。
1.3.5 非課税枠の再利用はできない
NISA口座で一度利用した非課税枠を再利用することはできません。ただし、翌年1月以降であれば、新たな非課税枠により、120万円まで上場株式や株式投資信託などの買い付けができます。
たとえば、2016年2月にNISA口座で120万円分の株式を購入し、2016年3月に20万円分を売却したとしましょう。2016年中に売却した20万円分をさらに使うことができるかといえば、そうではありません。当初に120万円分を使い切っているので、2016年12月31日まではNISA口座で新たに株を買ったりすることはできません。2017 年になると新たに120 万円分の非課税枠が増え、新規で株式や投資信託などを購入し、非課税枠を活用することができるようになります。
1.3.6 配当金は「証券会社で受け取る方式」を選択する必要がある
上場株式の配当やETF、REITの分配金を非課税とするには、「証券会社で受け取る方式(株式数比例配分方式)」を選択する必要があります。これを選択しないと、配当金に約20%の税金がかかってしまいます。
1.3.7 損益通算は対象外―多くの税金を払う可能性がある
NISAを使った取引で損失が出た場合、NISAではない口座で取引をしている場合よりも、多くの税金を支払う可能性があります。その理由は、NISAは損益通算の対象外だからです。
損益通算とは、投資信託や株の取引で損失が出た場合に、他の取引で出た利益と合算して税金を減らす仕組みです。
損益通算のイメージ
たとえば、ある取引で20万円の売却益が出て、別の取引で4万円の売却損が出た場合、税金は16万円の利益(20万円の利益-4万円の損失)に対して課税されることになります。
一方、NISA口座ではない口座での取引で20万円の売却益があり、NISA口座での取引で4万円の売却損がでた場合、税金は20万円の売却益に対して課税されます。したがって、NISA口座では損失のでるリスクが少ない資産に投資をし、運用するのが良いでしょう。
ここまでNISAの概要についてメリットと注意点を理解したところで、どのようにNISA口座を開設すべき金融機関を選べばよいのでしょうか。
2 NISA口座はネット証券の中から選ぶのがおすすめ
2.1 NISA口座を比較する時の3つのポイント
NISA口座は1人1口座しか開設できないため、どの金融機関で開設するのがよいかを考える必要があります。
比較する時のポイントは、主に以下の3つです。
- NISA口座の対象となる取扱金融商品
- 売買手数料
- 金融機関の独自サービス
これらのポイントについて、一つ一つ見ていきたいと思います。
1. NISA口座の対象となる取扱金融商品
取扱商品は豊富な方が良いですが、証券会社の方が銀行よりも圧倒的に取扱商品の幅が広く、取扱数も多いです。銀行では株式投資信託のみを扱っているのに対し、証券会社では株式投資信託のほか、国内外の上場株式、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)なども扱っています。
2. 売買手数料
売買手数料については安いに越したことはないでしょう。ネット証券は店舗型証券や銀行に比べ、手数料が安いと言えます。たとえば、株式の売買手数料はネット証券が店頭型証券よりも圧倒的に安く、投資信託についてもネット証券の場合には買付手数料無料(ノーロード)の投資信託の品揃えが豊富です。
3. 金融機関の独自サービス
金融機関の独自サービスにも注目する必要があります。サービスの違いに関しては、ネット証券では各社独自の発注ツールを利用することができますし、投資情報へのアクセスも容易です。証券アナリストやエコノミストレポートが無料で読める証券会社もあります。一方、店舗型証券や銀行では店頭窓口で投資に関するアドバイスを直接受けることができるというメリットがあります。
2.2 NISA口座の開設はネット証券がおすすめ
比較の際に最も重要なのは、自分が買いたいと思えるような商品を、その金融機関が扱っているかどうかですので、取扱商品の幅が広い証券会社を選ぶのがおすすめです。前述のとおり、銀行は取扱商品の数が少ないため、おすすめしません。
また、アドバイスを受ける必要がない場合は手数料の安いネット証券がお勧めです。ネット証券は開設に手数料がかかりません。
次の章では、ネット証券会社の選び方をご紹介します。
2.3 ネット証券会社の比較
金融商品の品揃えや売買手数料などを考慮すると、NISA口座はネット証券に開設するのがおすすめだとお伝えしました。では数ある中でどのネット証券で開設すれば良いのかと、疑問に感じるところだと思います。
以下では、ネット証券を目的ごとに比較しています。自分にとって最適な証券会社を見つけてみてください。
2.3.1 NISA口座で投資したい商品が決まっていない人
NISA口座で投資したい商品が決まっていない人には、取り扱うNISA対象商品の数が豊富なSBI証券、マネックス証券、楽天証券がおすすめです。
2.3.2 国内株式に投資したい人
すでに投資したい商品が決まっている人は、取り扱うNISA対象商品の数は重要ではありませんから、手数料を比較して検討しましょう。国内株式に投資したい人には、手数料の安い松井証券やGMOクリック証券がおすすめです。
詳しくは「NISA口座におすすめのネット証券会社徹底比較」の記事もご参照ください。
3 NISA口座の開設の仕方
証券会社に現時点で口座を持っていなくても、NISA口座を開くことができます。NISA口座はどのように開設するのか、その流れを見ていきましょう。
3.1 NISA口座開設のポイント
NISA口座を開設するにあたって知っておく必要があるのは、以下の3点です。
- 開設の諸条件:NISA口座は日本国内に住んでおり、口座開設年の1月1日現在で20歳以上ならだれでも開設することができます
- 1人につき1口座:NISA口座は原則1人1口座です。NISA口座を開設する金融機関の変更は1年単位でしか行えません。証券会社の口座は複数持つことができますが、NISA口座は1口座しか持てないため、どの金融機関でNISA口座を開設するのか十分に考えて決める必要があります。
- 非課税枠:NISA口座の利用限度額(非課税枠)は、1人につき年間120万円です。
3.2 NISA口座を開設する際の口座有無
NISAを開設するにあたり、金融機関で口座を持っているかどうかで手順が変わります。以下、口座保有の有無で整理します。
3.2.1 既に口座を持っている金融機関でNISA口座を開設する場合
主に以下の流れで、NISA口座を開設することができます。
- 申請書類を取り寄せる
- 「申請書類」、「住民票」、「マイナンバー」、「本人確認書類」を金融機関窓口に提出する
- 税務署にてNISA口座が重複していないかをチェック する
- NISA口座が開設される
提出書類は過去の転居の有無や金融機関によって異なり、確認が必要です。
3.2.2 新たに銀行や証券会社でNISA口座を開設する場合
新たに銀行や証券会社でNISA口座を開設する場合は、上記の手順の前に、銀行における預金口座・投資信託口座、証券会社の場合には総合取引口座を開設する必要があります。
3.3 NISA口座の開設にかかる時間と注意点
NISA口座の開設にかかる時間は金融機関によって異なりますが、ネット証券の場合1か月超かかることもあるので、余裕をもって開設手続きをしましょう。
たとえば、楽天証券では1か月から1か月半かかります。NISA口座開設で陥りやすいポイントとしては、必ず住民票が必要なので、事前に用意しておきましょう。
ネット証券によっては住民票取得を代行して取得してくれる証券会社もあります。キャンペーン期間中であれば無料で取得してくれるケースもあります。そうした機会はぜひ活用しましょう。
4 まとめ
ここではNISA口座の特徴や注意点、選び方そして開設方法までを紹介してきました。
NISA口座を利用するメリットは、株式や投資信託の売却益や配当に課税がされないことです。一方で、NISA口座での取扱商品や投資金額、利用期間には制約があり、NISA口座を利用して損をしてしまう可能性があるなど、注意点もありました。
こうしたメリットや注意点を考慮していただいた上で、興味のある方は検討してみてください。開設する時は、必要書類をよく確認し、時間に余裕をもって手続きをしましょう。