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最初は財務諸表から読み取るしかない
「財務諸表入門」では、「財務諸表」は非常に重要な情報源であるが、その分析だけでは、株式投資に成功するとは限らない、と説明しました。ただ、一方では、少なくとも最初は、その「財務諸表」を分析する以外に、入手可能で判断決定の根拠になるような情報はありません。やはり、最初は、この「財務諸表」から、今後の株価の動きを予想できるような数字を見出すことが求められます。最初から数字を見出すのが難しい時は、先ずは、考え方を整理しましょう。
株価を考える上で大切な3つのキーワード
重要なキーワードは3つあります。それは、「位置」「方向(性)」「強さ」です。投資しようとしている会社が、今現在はどの「位置」にいて、どの「方向」に向かって、どの「強さ」で進んでいるのか?ということになります。これは、ゴルフのティーショットを打つ時の注意点と重なる点が多々あります。この3つのキーワードをそれぞれ捉えて、みなさん各々の投資のスパン(期間)を決めて、投資するかどうか判断しましょう。尚、投資スパンとは、半年先を目処にしている、2~3年の中期投資、5年以上の長期投資、等々を意味します。
現在の「位置」を確認する
まず「位置」ですが、具体的に言うと、その会社は今現在、先行投資時期にあるのか、投資回収期(=利益拡大期)にあるのか、それとも、何もできない停滞期にあるのか、等を判断するものです。特に、その会社が先行投資時期にあるのか否かは重要です。一般的には、先行投資時期は利益が出難いですが、その先行投資が上手く行くと、将来は大きな利益を計上する可能性があります。その場合、今の株価は買っておく価値はあるかもしれません。逆に、その会社が投資回収期(=利益拡大期)の真只中にある場合、もうすぐピークアウトを迎える可能性があります。その場合、今の株価は高値圏内にある場合が多く、投資する価値があるかどうかは十分な精査が必要になります。
次に向かう「方向」を考える
次に「方向」です。「方向」には色々な意味が含まれていますが、単純な見方の1つは、売上高を増やす方向に進んでいるのか、コスト削減を進めて利益を増やす方向に進んでいるのか、等の他に、海外も含めた事業拡大に向かっているのか、それとも、リストラで事業縮小に向かっているのか、等があります。また、配当などの株主還元を増やす方向なのか、配当は増やさずに設備投資を増やす方向なのか、等も考察の価値があります。その会社の株価は、会社が進んでいる方向に見合ったものなのか、考えてみましょう。リストラで事業縮小に向かっていても、収益が劇的に改善するパターンは多々ありますから、十分に投資対象となり得ます。
今の勢いと、今後の勢い
3つ目は「強さ」です。別の言い方では「勢い」となります。その会社には「勢い」があるのか、もう既に成熟して緩やかな動きなのか、見る見るうちに弱まった動きなのか、区別しましょう。方法は色々ありますが、売上高や利益の増減率を見るのが一番手っ取り早いかもしれません。しかも、1年だけではなく、過去数年分の増減率などを見ていくのも有効です。一般的には、「勢い」が強い会社は株価が上昇基調となり、「勢い」が緩やかな会社は配当が増える傾向があります。
財務諸表からは「風」は読み取れない
これら3つのキーワードに加えて、もう一つ重要になるのが「風」です。先ほどのゴルフのティーショットを打つ時に例えると、「位置」「方向」「強さ」を意識して打つ他に、「風」の向きや強さなども考慮します。ただ、「風」は自分ではコントロールできない要素です。同じように、財務諸表から読み取れる「位置」「方向」「強さ」だけでなく、財務諸表から読み取れない「風」、つまりは、今現在の経済情勢(為替の動き、資源価格、世界情勢など)を考慮する必要があります。今の「風」、これからの「風」を予測しなければなりません。財務諸表だけを分析しても成功するとは限らない理由の1つがここにあると言えましょう。
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