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IPOの意味のおさらい
みなさん、前回(「IPOって何?~ルーキーを狙え」)はIPOとは何かについて基礎的なお話をしました。選ばれた会社が、これから証券取引所で株式を自由に売買してもらうその直前に、一定数の株式を一般の投資家に持ってもらうことです。創業者などの手元にある株式や会社が新たに発行する株式を、証券会社を通じて投資家に販売するのです。対象になる投資家は機関投資家だけではありません。株初心者の方を始めとした個人投資家も自由に参加できますし、実際に多くの個人投資家がIPOの株を手にしています。実際には、抽選などの手続きがあるため、少し手間が要るのですがこのお話は別の機会にしましょう。
株初心者も気になるテーマ、IPOは儲かるか?
今日のテーマは、これからIPOに入門する方に最も気になる話題「IPOは儲かるか?」というお話です。結論から言えば、地道にコツコツ続ければ通算ではローリスクで儲かる可能性がある、と言えます。「ちょっとイメージが違うなあ」とお感じになった方もいらっしゃるでしょう。実はこんな訳なのです。
新興ベンチャー企業の場合
最近話題になったIPO銘柄にCYBERDYNE(7779)があります。筑波大発の医療・介護福祉・生活支援分野のロボットスーツの会社です。高齢化や少子化を考えると、今後はとても大きな成長が期待できそうです。ちょっとわくわくしませんか?同社の場合、IPOで投資家に株式が譲渡された価格(公募・売出価格)は3,700円でした。ところが、その9日後に東京証券取引所マザーズ市場に上場して最初についた値段(上場初値)がなんと8,510円でした。わずかな日数で株価が2.3倍にも上昇したのです。素晴らしいパフォーマンスです。
有名企業の場合
株初心者のみなさんもご存じの、知名度の高い銘柄を見ておきましょう。おなじころにIPOしたリクルートホールディングス(6098)の公募・売出価格は3,100円だったのに対して、上場初値は3,170円でしたから、初値騰落率は2.3%でした。すかいらーく(3197)も同じ時期にIPOしましたが、公募・売出価格が1,200円、上場初値も1,200円、初値騰落率はゼロという結果でした。
儲かる、儲からないをわけるもの
いかがですか。
知名度の高い銘柄の場合、IPOで多くの投資家の手にその株式がゆきわたります。レアではない(希少価値度は小さい)、ということですね。そして事業内容も想像しやすく理解しやすいですから、多くの投資家が同じような将来像を描くことになります。こういう場合は、IPOで即座に大きな利益を手にすることは難しくなります。
その一方で、知名度の低い伸び盛りの企業やベンチャー企業には、大きな夢があります。足もとの業績よりも将来性が評価されます。しかも、IPOで出回る株数がそれほど多くありません。希少性があるのです。こうなると「買ってみたいなぁ」という投資家が増えることになり、IPOでの初値騰落率が高くなる傾向が見られます。
しかし、IPOで出回る株式数が限られるということは、投資家にとっては、自分がその株を手にするチャンスも低いということになります。地道にIPOに参加して「当たり」を引く確率を高めることが最も大切です。このあたりについて先に詳しく知りたい方は「新規公開株(IPO株)に挑戦する」「IPO取扱い実績が豊富な証券会社は?」を参考にしてみてください。
初値騰落率がマイナスなることもある
実は、今回の例には取り上げませんでしたが、公募・売出価格に対して上場初値がいきなり下回るというケースも散見されています。せっかくIPOで株を手にしたのに、初値が下がるなんて悲しいことですが、そのリスクを完全に排除することは難しそうです。IPOに参加する前に、その会社をよく調べた方がいいのですが、まだ情報量も少ないため、十分にはできないでしょう。やはり地道にIPOに継続参加して、勝ちの回数を増やすことが、株初心者にとっては王道だと思います。
知名度が高く安定成長する銘柄をIPOで買って中期で持つという手もある
ちなみに、先ほど例にあげたリクルートホールディングスとすかいらーくは、初値では大きな投資成果は出ませんでしたが、上場後半年で株価が各々約30%上昇しました。いわゆるバイ&ホールド(買って持ち続ける)という投資戦略も悪くなさそうです。
以上、今回はIPOが儲かるのか、その基礎となる仕組みについて、例をいくつか考えてみました。IPOに興味を持っていただけましたか?次回は、IPOに参加するのか、どういう戦略でいくのか、ということを考えるチェックポイントについてお話したいと思います。
2015年4月24日 02:35 公開