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2014年11月17日、経済指標の発表が株価急落につながった
2014年11月17日、日経平均株価は前週末比517円安(2.96%安)と急落しました。これは、当日朝に発表された2014年7-9月期の国内総生産(GDP)の実質成長率が年率換算で▲1.6%減となったことが理由です。
多くの投資家がこのGDPの結果を「予想外に悪い」、「GDPがこんなに悪いということは、企業の業績も酷いことになっているんじゃないか?」とネガティブに受け止めたためです。
ここまで読んで、GDP?、実質成長率?、何ソレ?と思われた方もいらっしゃると思いますが、今の段階では気になさらないでください。
GDPなどの「経済指標」が株価に大きな影響を与えることがある、ということだけ知っていただければ十分です。
そもそも経済指標って何? 見る上での注意点は?
皆さんが新聞等で目にする「経済指標」を平たく言うと、経済の結果を表す数値と言えましょう。関係省庁や業界団体が取りまとめた経済指標が多く存在します。
なぜ経済指標が大事なのか?
皆さんの勤務先の給料やボーナスが上がらないと「景気が悪い」と感じるかもしれません。でも、経済指標を見ると、社会全体としては鮮明に景気回復の兆候が出ている、なんてこともあります。
株式投資において重要なことは、独りよがりな判断をしないことです。先程の例で言えば、自分のボーナスが上がらない=景気が悪いという判断をし、それに基づいて投資スタンスを決めてしまうことです。経済指標を見ると社会全体としては景気回復の兆候が出ているのであれば、世の中の大半の投資家は、それを大前提に投資をしますから、自分では景気が悪いと思いこんでいるのに株価はどんどん上がるなんてことになりかねません。
少し前置きが長くなりましたが、経済指標は独りよがりな判断を避け、事実を正しく認識するための、転ばぬ先の杖のようなものといえるのではないでしょうか。
株初心者が経済指標を見る上での注意点と、見ておきたい経済指標
経済指標を見る際に最も重要な点は、「全ての経済活動を表す唯一の指標」というのは、この世に一つも存在しないという事です。つまり、ある一つの経済指標・統計させ見ておけば、その国、あるいは、その業界の全てを把握出来る訳ではないという事になります。
そうすると、「数多ある経済指標全て見るのか?」とやってられない気分になりますが、安心してください。数多く存在する経済指標の中から、特に、重要な経済指標を幾つか挙げていきます。
1. GDP統計
これはQE(Quarterly Estimations)と呼ばれ、四半期毎(3ヶ月毎)の国内総生産の伸び率を示しています。当該四半期終了2ヶ月後に、内閣府から公表されています。GDP統計は、把握の対象が国民経済全体の生産活動になるので、景気動向を把握するには便利な統計と言えましょう。
外国人投資家が海外投資をする際、最初にチェックをするのが、投資対象国のGDP見通しになります。ただし、GDP統計には、二つのデメリットがあります。第一は、統計としてまとまるのに時間がかかることです。第二は、先ずは「速報値」として発表されるので、後日、より多面なデータで計算される「確報値」として修正されることです。そこで、通常は、GDP統計よりも早く発表される経済指標をチェックして、経済動向を把握しようと努めているのです。
次に、GDPの支出面に焦点を当て、各種統計を説明していきましょう。これらの要素を細かく説明すると、逆に混乱してしまう可能性があります。以下に、簡単に説明しますが、この部分は飛ばして(割愛)して構いません。興味ある方だけ読んでみましょう。細かい点はいい、という方は、「2」へ飛んで頂いて結構です。
GDPの支出面は、Y=C+I+G+EXという算出式で表します。昔、この算出式を見た記憶がある人も多いのではないでしょうか?
Yは、最終的に知りたいGDP(国内総生産)であり、Cは「民間最終消費支出」となります。Iは「投資」となり、企業の設備投資や家計の住宅投資等から構成されます。Gは「政府部門の支出」です。EXは「純輸出」であり、輸出から輸入を差し引いたものとなります。
C:家計調査は、全国の約9,000世帯を抽出した調査となり、主に支出面から消費の実態を探ります。商業動態統計(旧商業販売統計)は、家計調査とは反対に、商品を販売する側を対象とする統計になります。
I:機械受注統計は、民間設備投資の先行指標となり、約6ヶ月から9ヶ月先の設備投資を予想します。これは、設備投資を行おうとする企業から注文を受けた企業を対象に調査を行います。デメリットとしては、造船のような大型受注が反映されるため、統計にブレが生じやすいことです。
法人企業統計調査&日銀短観は、直接設備投資を行おうとする企業を対象に調査を行います。
住宅着工調査は、住宅投資を表す経済指標となります。
G:政府支出を表す経済指標には、公共機関からの受注工事請負契約額等があります。
EX:輸出・輸入に関する経済指標の代表的なものとして、貿易統計が挙げられます。貿易統計は、商品の種類・量・金額を把握しているため、その国の貿易状況を表す最も基礎的な資料となります。
2. 鉱工業生産指数
これは国内全体の経済活動を捉えたものではなく、その名の通り、鉱工業の生産活動を示す指数です。日本の場合、重厚長大産業が主要産業だった時代は、経済指標の主役でした。現在、経済活動全体に占める第三次産業(サービス業等)の比率が高まっていること、また、日本企業の海外生産比率の上昇を受け、その重要性は徐々に薄れてきています。ただ、依然として重要な経済指標であることも確かです。
3. 消費者物価指数及び企業物価指数
物価に関する指標であり、物価動向を探ることによって、景気が過熱しているかどうかを判断します。
4. 完全失業率及び有効求人倍率
雇用に関する指標であり、その国の社会状況を反映するものとして、景気判断に利用します。
「全ての経済活動を表す唯一の指標」は、この世に一つも存在しないと述べましたが、GDPを始め、それぞれの経済指標には、メリット・デメリットがあります。今後、それぞれの経済指標を詳しく説明していきたいと思います。
2015年7月4日 17:40 公開
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