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株初心者は身近な企業を見てみよう
「株1(カブワン)」の特集「身近な企業に投資する」では、株初心者にも身近な企業を取り上げて、株式投資の面白さや、投資対象を選ぶ時の視点・考え方をお伝えしたいと思います。
55歳の主婦・相場翔子(アイバ・ショウコ)さんは、インターネット証券の口座を開設したばかりです。株式投資を本格的に始めようかどうかまだ躊躇しています。そこで、自分の住んでいるマンションのオーナーであり、ファンドマネージャー歴35年の65歳、株1博士(カブワンハカセ)に相談することにしました。相場さんは、株1博士に株式投資を始めるにあたって、どのように投資対象を選択すればよいかを聞いています。ちょっと聞き耳を立ててみましょうか(第一話を見逃してしまったかたはコチラ→スターバックスとマクドナルドを比べてみる)。
今回の二人の話は、株式投資に入門するにあたって、日本だけで事業をしている銘柄を選ぶべきなのか、それとも、世界でも事業を展開している銘柄を選ぶべきなのかのようです。
投資に向いているのは日本の小売業?世界の小売業
相場:博士、前回はマクドナルドに投資する際に米国のマクドナルド株か、日本のマクドナルドホールディングス(以下、日本マクドナルド)株のどちらが良いかという質問をしました。どう考えたらよいのでしょうか。
株1博士:答えはシンプルに考えるのがよかろう。世界で店舗を展開できる方が業績の潜在力は大きいと考えるのが自然かなぁ。
相場:じゃあ、米国のマクドナルド株を購入するほうが良いのね。
株1博士:マクドナルドの場合には、日本マクドナルドは海外では展開しにくいだろうから、マクドナルドが世界で店舗展開するというのを期待するのであれば、当然米国のマクドナルド株ということになるだろうな。
相場:なるほど。じゃ、日本の小売株なんて投資対象に入らないのではないかしら。
株1博士:そんなことはないぞ。「ユニクロ」を展開しているファーストリテイリングや、無印良品などは海外でもブランドが認め始められていて、今後の事業展開が期待できる企業といえる。セブン&アイ・ホールディングスのセブンイレブンも米国での店舗出店を進めてきている。
相場:でも、セブンイレブンって、もともとは米国の小売事業だったのでしょ。確か、経営不振でイトーヨーカ堂(現セブン&アイ・ホールディングス)が買収したと記憶していますが、そのセブンイレブンが改めて米国で受け入れられるのでしょうか。
株1博士:おぉ、よく知っているな。とても株初心者とは思えんよ(笑)。最近、セブンイレブンが店舗で行っている100円コーヒーやドーナツの展開も、米国市場での店舗展開を促進させるためには有効な手段かもしれんな。この辺りは、Longine(ロンジン)の椎名則夫アナリストがコンビニの店舗展開について面白い分析をしているから参考にするとよいかもしれん(「コンビニエンスストアの店舗数のポテンシャル-ファンドマネージャーとアナリストのよくある会話から」)。
それほど容易ではない、小売業の海外展開
相場:すると、日本の小売業は、相当有望じゃないかしら。私は、海外旅行も好きで、海外で買い物をすることも多いけれども、日本のサービスの質は世界でも圧倒的に高い水準にあると思うわ。
株1博士:うーん、実は、そんなに簡単ではないぞ。そもそも、プロのファンドマネージャーの間では小売業はこう言われている―「小売りは文化だ」。
相場:えっ、どういうこと?
株1博士:「買い物」、つまり消費行動は各地域で異なることが多い。これは、特に食文化などを考えればわかることだが、ところ変われば品変わるともいえるだろうし、宗教などにより食べ物が制限されることだってある。一概には、世界で事業展開することは難しいのだ。
相場:確かに、ウォルマートやカルフールといった海外の大手ディスカウントストアやスーパーマーケットは、鳴り物入りで日本へ進出したけど、ことごとく失敗した感じよね。日本のスーパーと比べると、買い物がしづらいのよね。
株1博士:株式投資では、その感覚が非常に大事で、その消費者としての感覚はプロの投資家と同じか、それ以上のアドバンテージであることが多い。株初心者とはいえ、相場さんはその消費者感覚を十分に生かすべきだな(参考:生活の中で感じるヒットを探れ)。
相場:じゃ、世界で成功している日本の小売業の共通点は何なの?
株1博士:一言で言うと「ライフスタイルを提案できている」ということかなぁ。
相場:また、難しいわね。博士はすぐに私が株初心者ということを忘れますよね(笑)。
株1博士:違う言葉で言うと、今ある生活習慣を変えるほどに新しいアイデアを提案できているか、となるのだが、こちらの方がわかりやすいかもしれないなぁ。
相場:うーん、どういうことかしら。
株1博士:一例をあげよう。ユニクロの軽いダウンジャケットを着ることで、低温環境が必要な職場、例えば、魚市場や花市場で働く人が、重い防寒服を着なくても仕事がしやすくなったのは、そうした実例の1つだろうなぁ。他には、ダウンジャケットがあることで朝起きてすぐに暖房を使わなくなったり、昼間の暖房の温度を少し低めに設定したりすることで、日常生活でのエネルギー消費を減らすことができる。これは社会的インパクトがあるので、大きなライフスタイルの提案といえる。もう10年近くクールビズやウォームビズという言葉が使われてきているが、そうしたことができるのも、技術革新により衣料・アパレルが進化してきているからなのだ。
相場:なるほど、なるほど。もっと、具体的に教えてください。
株1博士:ユニクロの衣料の原料に東レとの共同開発の材料が使われることがある。ヒートテックはご存じだろうとは思うが、その材料は東レが供給している。一昔前は、大手化学メーカーの東レが、アパレルメーカーと材料を共同開発するなんて全く考えられなかったことだ。
相場:技術革新でライフスタイルがかわるなんて不思議ね。
株1博士:ライフスタイルが変わる背景には、技術革新が絡むことが多い。アップルのiPhoneもその代表的な例といえる。その話はまた別の機会にするとしようか。
まとめ
株1博士と相場さんの会話はいかがでしたか?今回のポイントは、次の二点でしょうか。
- わたしたちに身近な小売業の中で投資に向くのは、日本だけではなく世界に展開できる企業
- でも小売業の海外展開はそう簡単な話ではなく、ライフスタイルを提案できる企業に限られる
二人の会話はライフスタイルを変える存在として技術革新に及びましたね。次回はどんな展開になるのでしょうか?ご期待ください!
次回の記事を読む前に、株式投資について1から学びたい方は「株式投資って、一体何のことなの?」をご覧ください!
2015年4月19日 20:40 公開
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