株を買うならネット証券、投資信託もネット証券が最もお得。そんな時代です。
ネット証券の株式売買手数料は大手証券よりもはるかに安く(数十分の一のケースも)、情報サービスも充実。いつでもどこでもPCやスマホで売買できる便利さが受けているのです。なんと、個人投資家の株取引の9割以上はネット証券を通じで行われており、投資をするのにネット証券に口座を開くのは当たり前になっています。
一方で、ネットで金融資産を管理することに対して恐怖感を感じる方もいらっしゃるでしょう。「ネット、やばくないの?」と条件反射的に思われる方も。
そこで、この記事では、ネット証券のデメリットを洗い出し、その上でもう一度大手証券と比べてみたいと思います。記事を読み終えた後に、みなさんの頭の中のモヤモヤ感が少しでも晴れていれば嬉しいです。
目次
1 個人投資家の株取引には不可欠なネット証券のデメリット
1.1 誤発注は自分で防ぐしかない
みなさんは証券業界を震撼させたジェイコム事件をご存じですか? 2005年12月8日午前9時27分、東証マザーズ市場に新規上場した総合人材サービス会社ジェイコムの株式(発行済み株式数14,500株)に関して、みずほ証券の担当者が「61万円1株売り」と注文すべきところを「1円61万株売り」と誤ってコンピューターに入力した事件です。
この時、コンピューターの画面には注文内容の異常を警告する表示が出ていましたが、担当者はこれを無視して注文を執行しました。当時の報道によると、「警告はたまに表示されるため、つい無視してしまった」とのことです。この注文でジェイコムの株価は急落し、みずほ証券のみならず、東京証券取引所をも巻き込んだ大問題に発展したのです。
何が言いたいかというと、プロでも時に誤発注をしてしまうということです。ネット証券で注文を出す場合、PCやスマホを使って自分で発注を行います。大手証券の営業担当者にお任せすれば、彼らがチェックしてくれますが、ネット証券の場合は、手数料が安い代わりに、全て自分でチェックすることになります。
ネット証券の画面には、誤発注を防ぐための警告をする仕組みなどがありますが、警告に反応できるかどうかはあなた次第です。特に、例えば487円と478円のようなミスはよくありがちです。発注時は、入力した数字を指差し確認するくらいでちょうどいいと思います。
1.2 自分で勉強し、投資判断を下すしかない
大手証券で営業担当者を相手に取引をする場合、営業担当者があれこれと金融商品を薦めてくれます。アドバイスの良し悪しはあるにせよ、あなたのところには色々と提案が寄せられます。
一方、ネット証券を使う場合は、自ら勉強し、自ら何に投資するか判断するしかありません。もちろん、多くのネット証券は貴重な投資情報を口座開設者に無料で提供したり、専門家による無料オンラインセミナーを提供してくれたりします。でも、基本的にはあなた自身が学び、判断するという姿勢が必要になります。
投資をする人間にとって、自ら学ぶ、判断するというのはとても基本的かつ重要なことです。ですから、上記が厳密にデメリットかどうかはやや怪しい部分があります。ただ、大手証券に比べれば、自分で頑張らなければならないということだけは理解していただきたいと思います。
1.3 PC、スマホの操作ができない方には不向き
ネット証券の取引画面の操作は決して難しいものではないため、多少なりともPCやスマホを使っておられる方なら、何ら問題無く慣れることができるでしょう。具体的には、以下を満たしていれば十分にネット証券に対応していけると思います。
- ネット取引に支障のないスペックのPCやスマホを持っている(少なくとも3年以内に購入されたものであればまず問題ないと思います)
- ブラウザ(Internet Explorer、Chrome、Firefox、Safariなど)やアプリ経由でネット接続できる
- 全角・半角を使い分けて文字入力ができる
一方で、日頃まったくPCやスマホを使わない方には少しハードルが高いと思われます。あまり知られていないことかもしれませんが、大半のネット証券では、電話による株や投資信託の注文サービスに対応しています。特に、SBI証券、楽天証券の2社は、電話で注文できる商品のラインナップ(日本株、外国株、投資信託等)はネット取引とほぼ同レベルにあり、とても充実していると言えます。
しかし、ネット証券といえども、電話注文の手数料は高いです。例えばSBI証券で日本株を50万円買うと、ネット注文の手数料が272円(税抜)であるのに対し、電話注文の手数料は2,000円(税抜)となってしまいます。
やはりネット証券の持ち味である格安の手数料や、無料で使える豊富な投資情報は、自分でPCやスマホを使ってこそ享受できるものです。PCやスマホの簡単な操作はマスターした上で口座を開設したいものです。
1.4 システム障害のリスク
ここで言うシステム障害のリスクには大きく2種類あります。1つは、証券会社側のシステム障害リスク、もう1つはあなたのPCやスマホのトラブルについてです。
証券会社のシステム障害リスク
基本的に滅多にありません。
しかし、アベノミクス初期の頃、日銀の金融政策発表とともに株の取引量が急増し、ネット証券のサーバーがダウンしたこともありました(その後ネット証券各社は大幅なサーバー強化を実施)。
このような非常事態において、ネット証券はバックアップサイト(緊急時の取引用サイト)の案内をするなど、投資家が何らかの形で売買を行えるような措置を講じます。緊急時のリスクを少しでも下げるには、(1)バックアップサイトの確認、(2)電話取引方法の確認をしておくのが良いでしょう。
可能性は極めて低いものの、ごくまれに発生するリスクとして頭の片隅に置いておいてください。
あなたのPCやスマホのトラブル
ネット証券での取引はPCやスマホで行うものですから、あなたのPCやスマホが何らかの理由で使えない時は、取引ができません。紛失、水没、電池切れ、故障など色々ありますね。やはり、事前に電話取引方法の確認をしたり、代替できるデバイスを持っておくのが良いでしょう。
2 大手証券とネット証券を比べると、やはりネット証券が圧倒的に便利
さて、ここまでネット証券のデメリットを挙げてきましたが、それらを考慮してもやはり、ネット証券は便利です。大手証券との比較で見ていきます。
2.1 手数料が最大で数十倍違う
下表は、代表的な大手証券(野村証券、大和証券、SMBC日興証券など。総合証券と呼ばれることもあります)とネット証券で、日本株を50万円分購入した時の株式売買手数料をまとめたものです。一番高い大手証券のプランが6,500円なのに対し、一番安いネット証券のプランは180円。なんと36倍となっています。手数料の格差は歴然としています。
主な大手証券・ネット証券で日本株を50万円購入した時の手数料比較(単位:円、税抜)
証券会社名(プラン名) | コンサル | 対面/電話/ネット | 手数料(税抜) |
---|---|---|---|
野村証券(本・支店:お店) | 6,500 | ||
大和証券(コンサルティングコース:お店) | 5,750 | ||
SMBC日興証券(総合コース:お店) | 5,750 | ||
SMBC日興証券(総合コース:電話) | 4,888 | ||
SMBC日興証券(ダイレクトコース:電話) | 4,888 | ||
大和証券(コンサルティングコース:ネット) | 4,309 | ||
野村証券(ネット&コール:電話) | 4,095 | ||
大和証券(ダイレクトコース:電話) | 4,025 | ||
SMBC日興証券(総合コース:ネット) | 4,025 | ||
大和証券(ダイレクトコース:ネット) | 1,725 | ||
野村証券(ネット&コール:ネット) | 477 | ||
マネックス証券(ネット) | 450 | ||
SMBC日興証券(ダイレクトコース:ネット) | 400 | ||
岡三オンライン証券(ネット) | 350 | ||
楽天証券(ネット) | 250 | ||
SBI証券(ネット) | 250 | ||
au カブコム証券(ネット) | 250 | ||
GMOクリック証券(ネット) | 241 | ||
ライブスター証券(ネット) | 180 |
注:取引毎の手数料を記載、各種割引・特典は考慮せず
注:2018年1月5日現在
2.2 大手証券の付加価値とされる「アドバイス」で手数料の差を正当化できるか?
大手証券(総合証券)のメリットは、どの株式銘柄を買うか、今買うべきか、いつ売るべきかなど、株取引で悩んだ時に営業担当者に対面や電話で相談できることです。
ただ、1つ気をつけておくべきは、証券会社の営業担当者は販売のプロであって、投資判断のプロではないということです。ごくまれに上がる可能性の高い株を教えてくれる営業担当者もいるかもしれませんが、極めて属人的な話になります。取引の仕方など、基本的なことであればネット証券のコールセンターでも丁寧に教えてくれます。大手証券の営業担当者がネット証券との手数料の差を正当化できるほどの付加価値を発揮するのは、かなり難しい時代になっています。
3 まとめ
最初から投資判断や発注を完璧にできる人はいません。みなさんには少しでも早い段階から、自分で調べ、判断し、発注するプロセスに慣れていただきたいと思います。
ネット証券にも短所はあるものの、「投資は自己責任」という大原則を理解している方にとっては、便利な存在であることも間違いありません。
最後に、ネット証券での取引はPCやスマホあってのものですので、ウイルス対策などは万全に!