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目次
はじめに
株式投資をはじめるとき、まず一番にするべきことは情報収集です。でも、インターネット上に膨大な量の情報があふれている現在では、どこから情報を集めればよいのか、信頼していい情報なのか、正直よくわからないという人も少なくないでしょう。そこで、ここでは投資家によく使われる信頼性の高い情報をご紹介します。それぞれの特徴を知り、自分にあったものを使いこなせれば、投資にもスムーズに入っていくことができます。
1. 情報の視点は2つ
株式投資に関する情報は、大きく分けて2つの視点から見ることが必要になります。市場全体に関わるマクロ的な視点のものと個別企業に関するミクロ的な視点のものです。ざっくり言えば、マクロ的な情報は投資のタイミングを計るのに役立ち、ミクロ的な情報は投資する企業を選ぶ際に役立ちやすいと言うことができます。では、具体的にはどのような情報が必要なのでしょうか。
1.1 マクロ的視点の情報
株価に影響するのは、個別企業の要因だけでなく市場全体の要因もあります。景気や海外市場における株価の動向、テロなどの政治リスクなどによって、市場全体が上昇したり下落したりすることがあります。そのため、市場全体に影響を与えそうな情報はチェックしておく必要があります。代表的なものを挙げておきましょう。
1.1.1 GDP
GDP(Gross Domestic Product)は、国内総生産とも言い、一定期間内で国内において生産されたモノやサービスなどの付加価値の総額を言います。GDPは、経済成長を表す数値であり、GDPが増加していれば経済も成長していると考えられています。GDPには、実際の数値である名目GDPと物価変動の影響を除いた実質GDPがありますが、経済成長や景気動向の指標として考えるのであれば、実質GDPを見る方がいいでしょう。経済成長率は、実質GDP増加率で表すことが一般的です。経済成長が続けば、株価も全般的には上昇することが期待されます。なお、GDPは毎年2、5、8、11月の四半期ごとに内閣府より公表されます。
1.1.2 景気動向指数
景気動向指数は、生産、雇用等、経済に重要かつ景気に敏感に反応する29項目の景気指標をもとに算出されます。景気動向指数には、コンポジット・インデックス(CI)とディフュージョン・インデックス(DI)があります。 CIは構成する指標の動きを合成することによって景気変動の大きさやテンポ(量感)を表すことを、またDIは構成する指標のうち、 改善している指標の割合を算出することによって景気の各経済部門への波及の度合い(波及度)を測定することを主な目的としています。また、景気の現状を示す「一致指数」、数カ月先を示す「先行指数」、半年から一年程度景気に遅れて反応する「遅行指数」の3つがあります。好景気であれば株価も上昇するため、景気動向指数も株価全般の動きを予想する上では重要な指標です。景気動向指数は、毎月内閣府より公表されています。
1.1.3 失業率
失業率は、完全失業率とも言われ、労働力人口に占める完全失業者の割合で算出されます。国の雇用情勢を把握する重要な数値です。雇用と景気は密接なつながりを持ちます。失業率は総務省が実施している労働力調査で、毎月公表されています。
1.1.4 有効求人倍率
有効求人倍率も完全失業率と並んで国の雇用情勢を把握する重要な数値であり、有効求職者数に対する有効求人数の割合を算出したものです。公共職業安定所で扱ったものが対象であり、1倍を上回ると労働市場が活況であるとされています。有効求人倍率は、毎月厚生労働省より公表されています。
1.1.5 為替レート
為替レートも景気動向や株価に影響を与える重要な指標です。特に、米ドル/円(USD/JPY)の動向は押さえておく必要があります。円高ドル安になると内需・輸入型産業には有利になり、ドル高円安になると外需・輸出型産業に有利になる、というように為替の変動によって株価が影響を受ける場合も少なくありません。また、海外の投資家の動きにも影響を与えるため、為替レートと株価の関係は気に留めておくとよいでしょう。
1.1.6 金利
金利も株価と密接なつながりがあります。一般的には、金利が上昇すると株価が下がると言われていますが、これは企業が借り入れによって資金調達を行う際のコストが上がることを意味しており、企業業績にマイナスの影響を与えると考えられるためです。また、一定程度金利が上昇すると、リスクのある株への投資がそれほど魅力的でなくなるということもあり得ます。一方で、好景気の時には資金調達が活発化し、金利が上昇していても企業業績の伸びが期待される場合もあり、金利も株価も上昇するということもあります。
1.1.7 日銀短観
日銀短観は、正式名称を「全国企業短期経済観測調査」といい、日本銀行が全国の約1万社の企業を対象に四半期ごとに実施している統計調査です。企業の自社の業況や経済環境の現状・先行きについての見通しや、売上高や収益、設備投資額といった事業計画の実績・予測値などの項目について調査しています。調査票の回収率が高く経営者の直近の考えが反映されやすいため、株式市場からも注目されています。日銀短観は、4月、7月、10月、12月に発表されます。
1.1.8 海外の株価指数
海外の主要な株価指数も株価に影響を与えることがあります。アメリカのNYダウやS&P500、NADAQ総合指数、ヨーロッパのFTSE100、中国の上海総合指数などは世界から注目されている株価指数です。リーマンショックなどの過去の大暴落の例もあるように、これらの株価指数に大きな動きがあると、日本の株式市場にまで影響が波及することもあります。
このように、ここに挙げた主なものは、株価に影響を与えることもあるため、押さえておくとよいでしょう。また、国内に限らず、アメリカをはじめとする主要各国の為替市場の動き、経済成長や雇用統計、金利政策なども日本の市場に影響が波及することがあるので、大きな変化がないか見ておく必要があります。さらに、こういった指標だけでなく政治や経済、社会などのニュースなどにもアンテナをはっておきましょう。
このように書くと、情報収集はとても大変に思えてくるかもしれませんが、押さえておくべき重要な情報はニュースや新聞などで報道されることが多く、少し意識してさえいればだいたいの情報は自然と入ってくるので、それほど身構える必要はありません。
1.2 ミクロの視点
マクロの視点に対してミクロの視点とは、投資を考えている個別の企業情報のことを言います。投資先の企業を検討する際には、ミクロの視点で多くの必要な情報を集め、じっくりと検討することになります。先に挙げたマクロの視点よりもこちらの方が株価への影響が直接的にイメージしやすい情報でしょう。このような情報は、誰もが必要とする情報ではないため大きく報道されることも少なく、基本的には自分から取りに行く必要があります。主なものを挙げておきましょう。
1.2.1 株価のヒストリカルデータ
株価のヒストリカルデータは、その企業の株価のおおよその水準やこれまでの推移、現在のトレンドがわかります。ヒストリカルデータを見ると、どれぐらいの価格で買うのが適切か、自分なりの分析をすることが出来ます。なお、ヒストリカルデータは、情報サイトや証券会社のHPから入手することが出来ます。
1.2.2 決算情報
決算情報は、その企業を知る上では最も重要かつ詳細な情報源であり、必ずチェックしておくべきものです。売上や利益、資本などの増減はもちろんのこと、来期の決算予想も含まれており、今後の企業の業績を予想する上では非常に重要な情報です。また、数値だけでなく営業報告書などには、経営者の見通しなども書かれていることが多く、こういった情報にも目を通しておきたいものです。決算情報は、有価証券報告書や決算短信などがありますが、最近はディスクロージャーに力を入れる傾向が強く、決算の説明資料などを図やグラフなどを用いて簡潔にわかりやすくまとめている企業も多く見られます。
1.2.3 企業のニュース
企業の最近のニュースも重要な情報です。例えば、合併や業務提携、不祥事などは株価に影響を与えることも少なくありません。経営者に関する情報なども出ていることがあります。このようなニュースは企業のHPでも確認することができますし、情報サイトなどで検索できます。
1.2.4 業界に関する情報
個別企業だけでなく、その業界に影響を与える情報も見過ごせません。例えば、ガソリン価格の上昇などは運輸業界にコスト増をもたらすといった影響がありますし、外国人観光客の増加はホテルや百貨店などの業界にプラスの影響をもたらします。このように、関心のある業界については、その業界特有の情報についてもキャッチできるようにしておくとよいでしょう。
1.2.5 同業他社の情報
同業他社の情報もその企業の特徴を知る上で重要です。その企業が業界内においてどのような位置づけなのか、ライバルがどんな企業なのか、ライバル企業の出方によってはマーケットシェアが変わるなど、業績に影響が出てくる可能性もあります。いくつかの企業について、見ておくとよいでしょう。
ミクロの視点は、対象とする企業の周辺に絞ればよいので、イメージもしやすく情報も得やすいものです。情報量はかなり多いかもしれませんが、株価に与える影響はマクロの視点よりも予想しやすいので、有効な情報を見つけていってください。
2. おすすめの情報収集
2.1 新聞
企業関連のニュースを網羅的にいち早く知るには、やはり新聞が一番かもしれません。主だったニュースはほとんどの新聞に載りますが、企業情報に特化しているのは日本経済新聞(日経新聞)でしょう。新聞の見出しを見るだけでも多くの情報が入ってきますが、紙面が煩わしいという人には電子版もあります。
>>日経新聞電子版
過去の新聞記事を検索したい場合には、日経テレコンも便利です。日経テレコンでは、過去30年分の新聞・雑誌記事を中心に、国内外の企業データベース、人物プロフィルなど、幅広いビジネス情報を収録しており、全国都道府県の50紙や750以上の雑誌などの媒体を検索することができます。また、日経テレコンは証券会社が口座を開設した利用者に対してサービスとして提供していることもあります。たとえば楽天証券に口座を開設すると、「日経テレコン(楽天証券版)」を無料で利用することができます。
また、特定の業界を詳しく知りたいというのであれば、各業界の情報に特化した新聞などもあるので探してみても良いかもしれません。
2.2 情報サービス
ロイターやブルームバーグなどの情報サービスからも投資に関するさまざまな情報が入手できます。いずれも独自のアプリケーションを用いた情報端末による情報サービスが主流なので、あまり個人投資家向けではないかもしれませんが、リアルタイムでニュースや金融データを配信していることもあり、プロの投資家には広く利用されています。なお、両社ともサイトがあり、こちらでも情報提供を行っています。
>>ロイターのサイト
また、個人投資家が気軽に利用できる情報サイトでは、Yahoo!ファイナンスがあります。株価指数や為替、個別株など、金融関連のさまざまな情報が無料で提供されています。個別株では、企業の基本情報だけでなく決算データ、株価のヒストリカルデータやチャートなどもあり、とても便利です。
ここで紹介した以外にもいろいろな情報サイトがあり、それぞれ工夫や独自性が見られます。自分にとって使い勝手がよく信頼性の高いサイトを見つけてみて下さい。
2.3 会社四季報
会社四季報は、東洋経済新報社が四半期ごとに発行する株式投資の情報本です。会社の業績予想を中心に、所在地や財務情報や株主など、さまざまな会社に関する必要情報がコンパクトにまとまっています。国内の全上場企業を網羅しており、株式投資に関心のある方などはパラパラと見るだけでも面白いかもしれません。なお、四季報は本で販売されているだけでなく、CD-ROMでの販売もあります。また、会社四季報オンラインという株式投資情報サイトもあります。
2.4 証券取引所のホームページ
証券取引所のホームページも投資をする上では欠かせない情報源です。日経平均やTOPIXなどの株価指数の動きや新規上場企業の情報の他に、売買代金ランキングなど市場に関するさまざまな情報が掲載されています。2013年1月より東京証券取引所と大阪証券取引所が経営統合され、日本取引所グループ(JPX)となっています。
2.5 証券会社のホームページ
証券会社のホームページも、口座を開設すればさまざまな情報を取得することができます。ネット証券の主だったところを見てみましょう。
2.5.1 SBI証券
売買手数料が業界最安水準のSBI証券ですが、情報提供もかなり充実しています。個別銘柄ではロイター社提供の株価・チャート・気配値等のほか、予想PER・実績PBR・予想配当利回り等の投資指標データも見ることが出来ます。他にもロイター社、フィスコ社、モーニングスター社提供のニュースやロイター社提供の各市場毎の値動き、出来高、売買代金などのランキング、モーニングスター社提供の個別銘評価レポート、会社四季報や株主優待検索機能、スクリーニング機能などもあります。
2.5.2 楽天証券
楽天証券もSBI証券と並んで売買手数料が業界最安値水準ですが、楽天証券と言えば、「マーケットスピード」というトレーディング・ツールが知られています。このツールは、一定の条件を満たせば無料になるというものですが、20種類以上のテクニカルチャートや日経テレコンなどの投資情報、投資判断がしやすいよう投資情報が1つの画面にまとまっているだけでなく、ドラッグ&ドロップ発注が可能な機能などもあり、リアルタイムかつ豊富な情報が売りとなっています。
また、口座を開設すると「日経テレコン(楽天証券版)」が使えるのも楽天証券の魅力のひとつでしょう。そのほか、楽天証券経済研究所を中心とした投資・資産運用のプロフェッショナルがレポート、コラムを執筆する楽天証券オリジナルの投資情報メディア「トウシル」などもあります。
2.5.3 マネックス証券
マネックス証券でも口座開設をすれば無料で利用できる情報が豊富にあります。個別銘柄では、リアルタイムの株価情報やアナリスト評価、フィスコ社などから配信されるニュースや会社四季報、優待情報などを見ることができます。他にも、「マルチボード500」という最大500銘柄を登録可能で1シート100銘柄を一覧表示できる株価自動更新ツールや銘柄探しに役立つ様々な検索ツール、各市場別の値上がり率、値下がり率、売買高、売買代金のリアルタイムのランキングやアナリストレポート、スクリーニング機能などがあります。
また、有料になりますが、日経新聞電子版や複数のリアルタイム株価自動更新ボードなどもあり、情報だけでなく分析ツールなどが提供されています。
代表的なネット証券3社を挙げましたが、他の証券会社でもそれぞれが情報提供に力を入れており、独自のものも数多くあります。口座開設が条件となるところも多いですが、証券会社における情報提供サービスは投資サポートを前提に作られているので、必要な情報はほぼ不足なく入手できますし、便利でわかりやすいものばかりです。個人投資家でも情報目当てで複数の証券会社に口座開設する例も多いようです。ぜひ各社を見比べて活用してみてください。
2.6 いろいろな企業の決算情報が見られるサイト
いろいろな企業の決算情報を検索できるサイトも便利です。その中でも、金融庁の運営するEDINETは、「金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム」のことで、各企業が提出を義務付けられている開示書類が掲載されており、信頼性の非常に高いものです。有価証券報告書、有価証券届出書、大量保有報告書などが閲覧できます。どの企業も同じフォームであり、提出された書類をそのまま見られますが、書類内の検索機能はないため、項目や数値の検索などはややしづらいという面もあります。
また、決算短信などを検索できるサイトもあります。「決算プロ」は、上場企業 約4,200社の決算、業績予想とXBRLを速報するウェブサイトです。決算発表のスケジュールや本決算・四半期決算短信の適時開示、EXCELファイル化したXBRLなどが掲載されており、情報を見つけやすくなっているため、使い勝手もよいサイトです。
2.7 各企業のIRサイト
最近は、ディスクロージャーに力を入れる企業も増えてきており、どの企業のIRサイトも非常に見やすいものとなっています。過去の決算情報や説明資料なども充実しており、その企業を知る上では一番のわかりやすさと情報量といってもよいでしょう。その企業への投資を検討するのであれば、IRサイトは必ず見ておきましょう。
3. 情報収集するにあたって注意すること
3.1 一番欲しい情報は、おすすめ銘柄かもしれないが
株の投資を始めよう、あるいは始めてはみたもののまだあまり自信がない、という人にとって一番欲しい情報は、ズバリおすすめ銘柄は何か?ということかもしれません。実際、いろいろな雑誌やサイト、ブログなどで今おすすめの銘柄、といった記事を目にすることは少なくありません。でも、このような記事を鵜呑みにしてよく吟味せずに投資してしまうのは間違いです。どんなプロの投資家でも株価の予想は外れることがあります。絶対に正しいと言える株価予想はないのです。おすすめ銘柄はあくまでも個人の意見や予想であり、投資する責任は自分自身にあるということを忘れずに、参考情報程度にとどめておくようにしましょう。
3.2 信頼できる情報は数字データとニュース
一方、さまざまな情報がある中でも信頼してよい情報があります。それは、決算などの確定した数字データと事実を伝えるニュースです。投資判断をする際には、事実に基づいた情報を用いて、自分自身で分析して判断するようにしましょう。少し難しいかもしれませんし、判断の結果、株価が上がると思って投資しても下がってしまうこともありますが、自分で考えて投資する経験を積むことによって、自分で納得のいく投資判断が出来るようになっていくでしょう。
4. おわりに
いかがでしたか。投資に関する情報がこれだけ溢れていると、どのように情報を取捨選択するか、最初は迷うことも多いでしょう。ここでは、どのような情報が株価につながりやすいのか、信頼できる情報はなにか、必要な情報をどこから得ることが出来るのかを解説しました。是非、この記事を参考にして自分に合った投資情報を見つけてください。