株式投資とは、買った株をできるだけ高く売ることによって、リターンを大きくすることです。しかし、株の売り方が上手くいかないと、そのリターンを小さくするだけでなく、損失(マイナスのリターン)となってしまう場合も少なくありません。
この記事では、株を売る前に準備しておく手続きや作業を説明し、実際の注文の出し方も説明していきます。株を買った時と同じように、株を売る手順に慣れておくことで、株式投資のリターンを高めることが可能となります。
また、株を売った後で、次の株式投資に向けて取るべき行動についても説明していきます。株式投資は、株を売った時にもう次が始まっていると言えるのです。
目次
1 株を売る時に必要な3つのキーワード「時期」「価格」「株数」
既に保有している株を売る時には、いつ(時期)、いくらで(価格)、どれだけ(株数)売るのかを決めておきます。この3つの情報は必須です。1つでも欠くことができません。
1.1 売るタイミング(時期)を決める
株を売るタイミングを見極めることは、とても重要です。その際に、保有している銘柄の株価が、まだ上昇基調にあるのか、ちょうど高値圏にあるのか、既に下落基調に入ってしまったのかを見極めることが必要となります。
しかし、これを瞬時に見極めることは、株式投資の経験が長い人でも大変難しいと言えます。株式投資の経験が長い人ほど売り時を見極めるための勉強をしています。そのため、経験が未だ浅い人も、常日頃から、株価チャートを見る、その銘柄のニュースをチェックする、証券会社が発行しているレポートがあれば取り寄せる等により、投資情報に接していることが必要不可欠です。
<まだ上昇基調にあると判断される場合>
急いで売る必要はありません。そのまま保有することが望ましいでしょう。ただし、買った時に決めた目標株価に達している場合や、他の銘柄の株を買うために投資資金を作る必要がある場合などは、売ることも選択肢となります。
図表1
<ちょうど高値圏にあると判断される場合>
基本的には、その株を売るタイミングと考えられます。しかし時々、「いや、まだまだ上がるだろう」という希望的観測を持ち続けて売り時を逃すケースがあります。株価は一度下落トレンドに入ると、早期に回復することは難しくなってしまいます。したがって、まだ投資経験が浅い方は、高値圏にある時に一度売却して、しっかりリターンを得ておくことが大切です。
図表2
<既に下落基調に入ってしまったと判断される場合>
下落基調に入る前に売ることができれば幸いですが、気が付いたら下落トレンドに入っていたということはよくあることです。この場合、下落トレンドが早期に終結するのか、それとも長期化するのかを考える必要があります。早期に終結するならば、そのまま保有することも一考です。しかし、いったん下落トレンドに入ると、長期化することは決してめずらしくありません。基本的には、いったん売ることを念頭に置くべきかもしれません。
図表3
しかし、この3つのパターンを見分けるためには、まずは経験を積むことが重要です。何度も経験を重ねることで、それを見極める確率が徐々に高まってくると言えるでしょう。
1.2 いくら(価格)で売るか決める
その株をいくらで売りたいのか考えましょう。具体的な価格が決まっていれば、その価格で注文を出しますが、これを「指値注文」と呼びます。もし、具体的な価格が決まっていない場合は、その時々の市場の取引価格で買うことになります。これを「成行注文」と言います。これらの2種類の注文は、株を買う時と同じです。
指値注文の場合、実現可能で現実的な価格にする必要があります。たとえば、現在の市場の取引価格が1,000円前後の場合、1,500円などの高い価格で指値注文しても、売買が成立する可能性は低く、いつになっても株を売ることができません。直近2~3日間での最高値や、当日の高値を少し上回る価格などの具体的な希望価格を考える必要があります。
こうした具体的な希望価格がない場合、成行注文とします。株を買う時と同じように、成行注文にすれば、現在取引されている価格から大きく乖離した価格になる可能性は低くなります。ただし、たとえば、売り注文が殺到した時などでは、なかなか売買が成立せず、最終的には想定以上の安い価格で決まってしまうことがあります。成行注文の場合は、自分が売ろうとしている株の注目度なども合わせて考えます。
1.3 どれくらい(株数)売るか決める
その株をどれくらい売るのか決めます。売ろうとしている株が、証券会社に開設した口座に最低単位元株数(100株、もしくは、1,000株)しかない場合は、その株数しか売ることができません。
ところが、もし、証券会社の口座に最低単位元株数より多い株数(たとえば、3,000株、500株など)を保有している場合、全て売ってしまうのか、それとも一部だけ売って残りは保有するのかということになります。
株を売る時、特に、株価が上下に大きく変動している時は、何回かに分けて売ることも有効です。このように、売るタイミングを分散することで、価格の変動による影響を和らげる効果が期待できます。
2 注文の出し方
事前の準備が終わったら、いよいよ株を売ってみます。
2.1 「対面型証券」と「ネット証券」の注文の出し方の違い
証券会社に株を買う条件(銘柄、価格、株数)を知らせることを、注文を出すと呼びます。株を買う時と同じように、株を売る時も、この「注文」を出さなくてはなりません。また、対面型証券とネット証券で注文の出し方が違ってくることも、株を買う時と同じです。
対面型証券では、担当の営業スタッフに直接、あるいは電話で注文を伝えます。その担当スタッフから確認がありますので、大きな間違いを起こす可能性は低くなります。一方のネット証券では、スマホ等の端末に自ら入力して注文を出します。システム端末が確認メッセージを表示しますが、対面型証券のように十分なものではありません。そのため、数字の入力ミスなどを起こしやすくなります。自分自身で慎重に注文を入力する必要があります。
2.2 「指値注文」と「成行注文」の違い
注文を出す時、価格を指定する「指値注文」にするか、価格を決めない「成行注文」にするか指定する必要があります。通常、指定しない場合は成行注文となります。
図表4
指値注文 | 成行注文 | |
---|---|---|
価格の指定 | あり | なし |
対面型証券 | 担当スタッフがどちらにするか尋ねてくる | |
ネット証券 | 自身で選択 | 自身で選択 |
対面型証券の場合、担当スタッフが指値か成行かを尋ねてきます。しかし、自らが入力するネット証券の場合は、指値か成行かを決めなくてはなりません。従来のネット証券では、この選択をしない場合、自動的に成行注文となることが多かったようです。しかし、現在では、成行注文も自身で指定するようになっています。
2.3 株数を決める際の注意点
対面型証券では担当スタッフが、「どれだけ(何株)売りますか」「全て売りますか」のように尋ねてくれます。しかし、ネット証券の場合は、売る株数も自らが入力する必要があります。一部を売って、残りは保有したい時は、入力する株数に十分注意しましょう。
2.4 「売り注文」が出せる時間
注文を出せる時間は、対面型証券とネット証券では大きな違いがあります。
図表5
対面型証券 | ネット証券 | |
---|---|---|
注文が出せる時間帯 | 営業時間内 通常8:30~17:00 |
24時間 |
15時以降に出した注文 | 翌営業日に繰り越し | 翌営業日に繰り越し |
対面型証券の場合、注文が出せるのは営業時間内(通常は8時半~17時)となります。ただし、15時以降の注文は翌日に繰り越しになる場合が多いようです。一方、自分で入力するネット証券では、24時間いつでも注文を出すことができます。日中に時間が取れない人は、夜遅くや早朝に注文が出せるので非常に便利です。ただし、15時以降の注文が翌日に繰り越されるのは対面型証券と同じです。
2.5 「売り注文」の成立の確認
株式の取引において、売り(または買い)の注文が執行されて売買が成立することを「約定」と言います。大体の場合は、出した注文はその日中に約定されます。対面型証券の場合、担当の営業スタッフから電話で「約定しました」という旨の連絡があります。一方、ネット証券の場合は、自分の口座にアクセスして確認する必要があります。
ただし、指値注文で希望した価格が合わない時、その銘柄の取引量が極端に少ない時、その銘柄への売り注文(または買い注文)が殺到した時などは、約定されないことがあります。
売り注文が約定されなかった場合、その注文はいったんキャンセルになることが多いようです。その際は、もう一度改めて注文を出す必要があります。対面型証券では担当スタッフに確認しておきましょう。また、ネット証券では、自分自身でスマホ等の端末で確認しておきます。
3 株を売った後の行動が重要
買って保有していた株を売ったことで、株式投資の一連の流れは終了です。十分満足できるリターンを得られたケース、思ったほどのリターンを得られなかったケース、残念ながら損失を出してしまったケースなど、様々な結果があります。
しかし、株式投資は1回で終わりではありません。次の株式投資でより成功するために、株を売り終えた後で、今までのプロセスを検証することは非常に重要です。この検証をすることで、ああすればよかった、こうすればよかった、という所が見つかります。この反省を活かすことで、次の株式投資が成功する確率が大きくアップするでしょう。
3.1 終わったプロセスを書き出して振り返る
株を買ってから売った時までのプロセス(時期、価格、株数)を書き出すなどして、もう一度振り返りましょう。株を買った時期や価格は適切だったのか、株を売った時期や価格は良い選択だったのか等を、株式チャートなどを見て確認します。
後々振り返ってみた時、株の売買をベストな状況で行えたケースは非常に少ないと言えます。むしろ、「あの価格で買えたら」「このタイミングで売るべきだった」という後悔が出てくるのが普通です。ただ、それを結果論として片づけるか、それとも、なぜそれができなかったのか考えてみるとでは、次の株式投資で大きな差が生じます。
3.2 終わったことをいつまでも引きずらない
株を買ってから売った時までの過程を振り返ることは、とても重要です。しかし、「ああすればよかった」ということを、いつまでもクヨクヨと引きずることは健全ではありません。特に、株を売った後でその株価がさらに上昇してしまった場合、大きなリターンを逃してしまったと、なかなかあきらめがつかないものです。ですが、それよりも「なぜあのタイミングで売ってしまったのか」という原因を探すことの方が重要なのです。
3.3 株を売った時に、次の株式投資は始まっている
保有している株を全て売ってしまった後、達成感のためか、株価のチェックを怠ったり、新聞等のニュースを見なくなったりするパターンを時々見ます。このような場合、次に株を買う時に感覚が鈍ってしまうことが考えられます。株を売った後でも、常に株式市場との接点を持つことが必要です。
4 まとめ
既に保有している株を売るには、必要な3つのキーワード「時期」「価格」「株数」を決めて、注文を出します。ただし、対面型証券とネット証券では注文の出し方、約定の確認方法などで違いがあります。口座を開設した証券会社がどちらなのかを今一度確認して、あらかじめその違いを覚えておきましょう。
買った株を売ることでリターンが確定し、一連の株式投資は終わります。しかし、株式投資はまだ続きます。終わった一連のプロセスを振り返り、なぜあのタイミングで売ったのか、なぜあの価格で売ったのかを考えてみましょう。必ずしも上手くいったことだけではないと思いますが、それを振り返って原因を探してみることが、次の株式投資を成功させるための秘訣です。