
預貯金とは違い、株式投資には元本保証がありません。それ故に、株にはどんなリスクがあるのか、気になりますね。ここでは、株にまつわるリスクと、リスクを軽減するための方法をお伝えします。
目次
1 「リスク」には2種類ある
株の「リスク」としてよく言われるのが、値下がりリスク、流動性リスク、倒産リスクの3つです。いずれも「危険度」「危険性」という意味合いで使われています。
これらはいずれも正しいのですが、もう1つ覚えておいていただきたいのは、資産運用における「リスク」の本質は「収益のブレ(=株価の上昇、下落)」のことだということです。ここでは、「収益のブレ」をうまくコントロールして、リスクを軽減して安定的な投資リターンを得る術について説明します。
2 一般的には「危険度」という意味で使われる「リスク」
リスクという言葉は一般的には、危険度を表します。○○するのはリスクが高い、△△ならリスクが無い、と言った使い方です。おそらく、大半の方は株式投資について考える時でも、「リスク」=「危険度」と考えていることでしょう。
「リスク」=「危険度」と考えた場合、株式投資には大きく3つの「リスク」があると言えます。
値下がりリスク
1つ目は、値下がりリスクです。株は元本保証の無い金融商品であり、上場している株の値段(=株価)は、平日は毎日変動します。10,000円で買った株が5,000円になることもあります。これは多くの方がイメージしやすいでしょうし、最大の関心事だと思います。
流動性リスク
2つ目は、流動性リスクです。流動性というと難しい感じがしますが、簡単にいうと、株を売りたいときに売って現金化することができないリスクです。取引が活発でない株の場合は、自分が売りたくても買い手がおらず、取引が成立しないことがあります。結果として、思いもよらないほどの安値で売る羽目になることもあり得ます。
流動性が乏しい銘柄を買わないようにするのは簡単です。年間売買回転率が100%を下回る銘柄を買わないようにすれば、ババをつかむリスクは劇的に低下するでしょう。売買回転率というのは、株取引の活発さを示す指標の1つで、1年間の累積売買高(売買株数)÷期初期末の平均発行済株式数で計算されます。年間売買回転率が100%という状態は、1年間で平均して1回、株主が入れ替わっていることを意味します。
倒産リスク
3つ目は、倒産リスクです。会社が倒産すると、その会社の株価はゼロになるため、投資した資金をそっくりそのまま失うことになります。ただ、上場企業の倒産は非常に珍しいことです。3,500社程度ある上場企業の内、倒産するのは1%にも満たない確率です。
投資する前に、その会社に手元の現金は十分あるか、借金が多くないか、赤字が大きくないかをチェックするだけでも、ババをつかむ可能性は劇的に低下するでしょう。
ここまでで、流動性リスクと倒産リスクは比較的簡単に回避できることが分かりました。株価下落リスクをどのように管理するかが、株式投資における最大のテーマなのです。
3 資産運用における「リスク」=「収益のブレ」
3.1 「収益のブレ」という「リスク」
ここまで説明してきた通り、一般的には「株価が下がること」=「リスク(値下がりリスク)」という見方が浸透しています。これはこれで間違っているわけでも、否定されるものでもありません。
しかし、資産運用においては、株価が下がることなど日々当然に想定されることで、いかにこれとうまく付き合うかが重要なのです。
資産運用の世界では、「収益のブレ(株価の上昇、下落)」=「リスク」と定義し、この収益のブレをいかに軽減して、安定的なリターンを得るかを考えるということを覚えておいてください。
一例として、日本の株式(国内株式)と国債を比べてみます。
1970年から2014年までの間、国内株式と国債の年間リターン(価格の変化率)を見ると、次のようになります。国内株式の方が国債よりも上にも下にも激しく変動していることが分かります。国内株式の方が国債よりも収益のブレが大きいので、国内株式は国債よりも「リスクが大きい」と言えるのです。
国内株式 | 国債 | |
---|---|---|
最高リターン | 106%(1972年) | 19%(1977年) |
最低リターン | ▲41%(2008年) | ▲5%(1973年) |
3.2 「収益のブレ」というリスクを軽減する3つの方法
「リスク」、つまり「収益のブレ」を軽減して、安定的な投資リターンを得る手段は大きく3つあります。
手法1:長期投資
株を始めとする有価証券は、日々価格が上がったり下がったりします。しかし、投資期間が長くなればなるほど、「ブレ幅(=収益のブレ)」は小さくなり、投資リターンの安定化が期待できます。価格の「ブレ幅」が小さくなる、つまり、リスクが抑えられる傾向があるのです。
下表は株価指数の代表例であるTOPIX(東証株価指数)の保有期間別の年平均収益率を示しています(出典:三井住友アセットマネジメント)。
1年間の保有であれば、+65%から▲45%まで、極めて振れ幅が大きくなりますが、5年、10年の保有になると年平均の変化率が小さくなることが分かります。
なお、長期投資の対象とする銘柄、資産は、長い目で見れば成長が期待できるものにする必要があることは言うまでもありません。
手法2:分散投資
1銘柄に集中投資した場合、その銘柄の株価が大きく下がれば、損失が大きくなります。そこで注目したいのが、「分散投資」の手法です。
分散投資は、価格の動きが異なる銘柄(株式)、あるいは債券やREIT(不動産投資信託)などをいくつか組み合わせて投資を行う手法です。1銘柄の株価が値下がりしても、他の銘柄や資産の値上がりでカバーできる場合もあり、リスクを抑える効果が期待できます。
手法3:積立投資
積立投資は時間の分散投資とも言われます。株価が最安値の時に買って、最高値の時に売ることができれば、投資の成績は最高になります。
しかし、現実問題としては、いつが安い時なのか、高い時なのか、タイミングをドンピシャで当てるのはプロの投資家でも難しいことです。むしろ、タイミングを狙いすぎで、失敗することの方が多いくらいです。
自分のお金を投資していない時には冷静な判断ができても、自分のお金を投資して、それが急激に増え始めたとき、あるいは減り始めた時に、冷静な判断をすることは本当に難しいものです。
感情に振り回されることなくリスクを軽減する手法として、積立投資は有効です。毎月一定額を投資すると決めて、株価が安い時も高い時も買い続けるのです。一定額ずつ、時間分散して買い続けると、株価が高い時は少ない株数、株価が安い時は多い株数を買うことになるため、結果として、平均取得単価を抑えることにもつながります。
ただし、積立投資の対象とする銘柄、資産も、長い目で見れば成長が期待できるものにする必要があることは言うまでもありません。
なお、積立投資をする場合、株だけではなく、投資信託にも目を向けるとよいでしょう。投資信託のメリットは、月々1,000円といった少額でも様々な選択肢があること、そして買付時の手数料が無料(ノーロードと言います)の投資信託を選べば、コスト効率の高い投資ができることです。
4 まとめ
資産運用における「リスク」の本質は「収益のブレ(株価の上昇、下落)」です。
この記事で紹介した通り、投資収益のブレは、10年、20年といった長期で見た場合には成長が期待できる銘柄や資産を、長期投資、分散投資、積立投資の手法で購入することで軽減することができ、長期的に投資で成功できる確率が高まるはずです。