社債は、定期預金や国債よりも高い金利がもらえ、株式より価格変動が小さいことから、安定的な資産運用ニーズのある個人投資家に根強い人気があります。
最近では、ユニクロを展開するファーストリテイリングが、早ければ2015年内にも初の公募社債を1,000億円以上の規模で発行するとのニュースが話題になりました。
ところが、テレビやネットのニュースで株価のニュースは毎日のように流れるのに対し、社債のニュースはとても珍しく、個人投資家の方が社債に関する情報に触れる機会は滅多にありません。
ここでは、日頃目にすることの少ない社債について、株式と比較しながら、個人投資家の投資対象として何が違うのかを解説します。社債と株のどちらが優れているというものではありませんが、安定運用を好む人には、魅力的な金融商品だと感じられるでしょう。
目次
1 株と社債の違い
企業の資金調達手段である株式と社債。個人投資家の立場から、株式と社債はどのような投資対象なのか見ていきましょう。
1.1 株式の購入=企業のオーナーになること
社債の前に、比較的多くの人に馴染みのある株式について整理します。
ある会社の株式を購入するということは、その会社のオーナーになるということです。一例として、発行済株式数が100株、1株500円の会社の株を2株購入することを考えてみましょう。
この場合、投資額は500円×2株=1,000円です。1,000円を投資して、100株の内2株を購入したので、あなたはこの会社の2%(2÷100)の権利を所有するオーナー(株主)になります。
個人投資家の立場から見ると、株の購入は、出資により会社のオーナーになることです。お金を貸すのではなく、出資しているので、期限が来たら返してもらえるものではありませんし、上場株の場合は株価が毎日変動するので元本も保証されません。
しかし、株価が上がれば値上がり益(キャピタルゲイン)を得ることができますし、会社によっては、稼いだ利益の一部を株主に配当金(インカムゲイン)として支払うこともあります。
株式の購入=企業のオーナーになることで、値上がり益、または配当で利益を出すことを目指すのが一般的だと覚えておいてください。
1.2 社債の購入=企業にお金を貸すこと
一方の社債。ある会社の社債を購入するということは、その会社にお金を貸すということです。
貸したお金ですから、事前に約束した期限(償還期限と言います)が来れば、元本は返済されますし、金利ももらえます。なお、その会社が倒産した場合などには、元本が戻ってこないこともありえますが、極めてまれです。
少し視点を変えて、企業の立場から見ると、お金を借りる方法は2つあります。1つは銀行から借りる方法です。もう1つが社債として、投資家から直接借りる方法です。企業が社債を選ぶ理由は様々ですが、銀行から借りるよりも金利が低い場合などは社債が選ばれます。
そのため、企業は社債発行が必要と判断した時だけ、社債を発行して投資家からお金を集めます。時々しか発行されないので、テレビやネットで社債のニュースを目にすることも少ないわけです。
2 株式と社債の比較
下表は上場株式と社債の比較をしたものです。利率、元本割れリスク、途中換金性について順に説明していきます。
上場株式 | 社債 | |
---|---|---|
利率 | 2015年11月12日の東証1部予想配当利回りは約1.6% | 三菱東京UFJ銀行普通社債(期間10年の第160回債)の金利は約0.6% |
中途換金 | 証券会社経由で証券取引所に注文を出し、営業日ならいつでも換金可能 | 証券会社に買い取ってもらう。その社債の取引量が少ない場合、売却困難なケースもあり |
元本割れリスク | 株価が下落すれば、配当受取額以上の損失が出るリスクも。株価が上がれば値上がり益が発生 | 万が一、社債発行企業が破たんすれば元本が戻らないリスクもあるが、極めて稀 |
2.1 利率
上場株式の購入=出資(オーナー、株主になる)でした。お金を貸したわけではないので金利はもらえませんが、中には配当金を出す企業があります。配当金を株価で割ったものを配当利回りと呼んでおり、配当利回りが高いほど、出資額に対する配当金が多いことを意味します。
東証1部に上場する全銘柄の配当利回りの平均は、2015年11月12日現在で約1.6%です。これは、配当金の増減、株価の騰落によって日々変化しますし、企業によっても大きく異なりますが、全体像としては2%前後とイメージしてください。
社債については、発行する会社の信頼度(格付け)、発行するタイミング、社債の期間などによって、金利水準が全く異なります。利率が0.5%に満たないものから、5%を超えるようなものまで様々です。ちなみに、利率が低いものでも、国債や定期預金よりは高いのが普通です。
1つ覚えておいていただきたいのは、償還期限など他の条件が同じなのに利率が高い社債は、利率が低い社債に比べて相対的に破たんリスクが高い可能性があることです。
基本的に元本が確保されるのが社債の良いところですが、2001年に破綻したマイカルのように、借りたお金を返せない(債務不履行)ケースも、極まれにあるためです。
返してくれるか分からない人には高い金利で、確実に返してくれそうな人には低い金利でお金を貸すのと全く同じ構図です。
2.2 中途換金
上場株式の場合は、証券取引所が稼働している平日の9:00-11:30、12:30-15:00であれば、いつでも売却することができます(注文自体はネット証券を通じて夜間でも可能)。
もちろん、取引量が極端に少ない銘柄の場合は売却に時間がかかったりもしますが、基本的には「いつでも換金できる」のが上場株の大きな利点です。
社債を償還期限よりも前に換金しようと思えば、社債を購入した証券会社に買い取ってもらうことになります。ただ、途中での換金が不利になる場合が多いことは覚えておいてください。
社債は金融機関の間で売買されますが、なかには取引量が少ない銘柄も多いのです。証券会社などに買い取りを求めても、証券会社が転売しにくい社債は不利な価格で売却を迫られるケースもあります。
社債は、「償還期限まで保有し続ける」前提で投資すべき金融商品だと考えてください。
2.3 元本リスク
「1 株式の購入=企業のオーナーになること」、「2 株式と社債の比較」で述べたことと重複しますが、株式の場合は元本割れのリスクも、反対に値上がり益で儲かる可能性もあります。
社債については、償還期限まで保有を続ければ基本的に元本割れはありません。逆に値上がり益が得られることもありません。毎年金利が支払われ、償還期限が来たら元本が返済されます。
「基本的に元本割れはない」としたのは、例外があるからです。先程例に挙げたマイカルのように、社債発行企業が破たんすると元本が戻ってこない可能性があります。
3 株式や社債を買うには証券会社での口座開設が必要
株式も社債も、購入するには証券会社での口座開設が必要です。
社債は常にいろいろな銘柄が販売されているわけではなく、企業が社債を発行することになったら、いくつかの証券会社に販売を依頼します。社債に投資した人は、証券会社に口座を開設して、社債販売のお知らせを待つことになります。
なお、投資初心者に適した証券会社については、「株初心者におすすめのネット証券3社」で詳しく紹介しているので参考にしてください。ここで紹介している3社ではもちろん社債の取扱いもあります。
4 まとめ
企業のオーナーになるのが株式購入、企業にお金を貸すのが社債購入です。
オーナーに元本保証はありません。株式投資をする人は、元本割れのリスクを取って値上がり益を求める行為だと十分理解したうえで行ってください。
社債の場合、償還期限まで保有し続ければ基本的に元本が返ってきます。気をつけたいのは、償還期限などが同じなのに他に比べてやけに利率が高い社債です。信用リスクが高い投資になる可能性を必ず一度疑ってみてください。