信用取引の「追証」発生に最大の注意を

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目次

信用取引のリスクをもう少し学習しよう

前回までの説明において、信用取引の概要(簡単な仕組み、ルール)、信用買いの特徴と実例、信用売りの特徴と実例を見てきました。特に、皆さんが今までやってきた現物取引との違いがご理解できたでしょうか?信用取引を行うことで、今までの現物取引よりも利益拡大のチャンスが広がりますね。

一方で、現物取引より損失拡大となるリスクも広がります。特に、この損失拡大のリスクに関しては、十分過ぎるくらい学習する必要があります。“さぁー、私も信用取引にチャレンジしてみよう!”と意気込んでいる皆さん、後々後悔しないように、もう少しだけリスクについて学習しましょう。

信用取引における「委託保証金維持率」は20%以上

皆さんが信用取引を始めた後で、信用買いの際に最も注意しなければならないのが「委託保証金維持率」です。信用買いの際に、自己資金にレバレッジ効果をかけられる説明をしました。

例えば、自己資金30万円で100万円までの取引ができます。この基になるのが、「最初は約定代金の30%の委託保証金を(担保として)差し入れる」というルールです。覚えていますか?

実は、このルールは続きがあり、その後は「評価損を考慮後に、当初約定代金の20%以上を維持」することが必須要件になります。この「評価損を考慮後」というのが重要になります。第7回目の「信用買いの簡単な実例」で取り上げた電機メーカーA社での具体例を見てみましょう。

電機メーカーA社を信用買いした後、株価が下落したパターン

皆さんは30万円の自己資金を基に、株価が1,000円のA社株を1,000株信用買いしました。この時、約定代金は100万円、皆さんが差し出した保証金(30万円)はちょうど30%です。

A社の株価が上昇しているときは全く問題ないのですが、問題はA社の株価が下落した時です。株価が900円に下がったとしましょう。この時、皆さんの委託保証金維持率は、以下の式にあるように20%まで低下します。この20%はギリギリの水準です。

ここでのポイントは、最初に預けた30万円から、A社株の下落に伴う評価損▲10万円が差し引かれていることです。

「委託保証金維持率」が20%を割ると追加証拠金を入れる必要

さぁ、もし株価がさらに下落して800円になったとしましょう。この時、皆さんの委託保証金維持率は、以下の式にあるように10%となり、20%以上維持のルールに抵触します。この場合、皆さんは委託保証金維持率が20%以上になるように、新たに追加証拠金を入れなくてはいけません。この場合ですと、新たに10万円を入れる必要があります。

このように、信用買いした後で株価が下がり続けると、維持率が常に20%以上になるように追加証拠金を(証券会社に)入れなければなりません。この追加証拠金を「追証(おいしょう)」と呼んでいます。

「追証」は常に起こり得る、非常に大きなリスク要因

株価が急落したり、下げ相場が長期化したりすると、信用買いした投資家に「追証」が発生するケースが頻繁に発生します。後から後から資金を入れなければならないので、投資資金のなくなった人は、株価の回復を待つ余裕もなくなり、株価が大幅下落した時点で決済せざるを得なくなります。その結果、膨大な損失を被ることになるのです。

今回は、自己資金30万円から始める少額パターンでしたが、最初の自己資金が多額になると、その後の「追証」も多額になります。実際、こうした「追証」に迫られて自己破産を余儀なくされる人も決して少なくありません。

・委託保証金維持率は、その日の「終値」で算出します。

・維持率が20%を切った場合、証券会社の定める期日までに入れなければなりません。

・証券会社の定める期日は、2営業日後の午後までが多いようです。

・追証を期日までに支払わないと、強制的に決済が行われ損失が確定します。

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