最近、メディアで株主優待を日常生活に徹底活用している個人投資家を目にする機会が増えました。お得に生活していて羨ましいと感じませんか。みなさんも株主優待のメリットや必要な予算などに関心をお持ちではないでしょうか。しかし株式投資の経験が少ない方は、株主優待が魅力的に感じても手続きや利用方法が煩雑に思われるかもしれません。また株式投資自体を難しいと感じていらっしゃるかもしれません。
みなさんに知っておいていただきたいのは、実際には株主優待制度はそれほど難しくないということです。株主優待を受ける手続きはシンプルです。また、多くの場合、その株を持ち続けないと株主優待を利用できないわけではありません。そこで、まず株主優待を受けるために知っておきたい制度のポイントを簡単に整理し、注意点を確認しましょう。続いて、インターネットを利用して株主優待を探す方法を解説します。最後にベテラン証券アナリストの目線で、狙っておきたい株主優待をご紹介します。優待の魅力、投資予算、最近の会社の業績、株価水準を総合的に検討して厳選しました。投資予算20万円と比較的少額でも狙える銘柄も選んでいます。この機会に株主優待制度を徹底活用してお得な生活をしてみませんか。
目次
1 株主優待制度のしくみ
ここでは株主優待制度のしくみについて説明します。株主優待を受ける上でさまざまな注意点もありますので、確認しておきましょう。
1.1 株主優待制度は特定の日の株主に対して贈られる特典
株主優待制度は特定の日の株主に対して贈られる特典と考えてください。配当金と似ています。例えば3月末に3月決算の企業の株主になると配当がもらえますが、株主優待も受けることができるのです。優待の中身も実にさまざまです。自社製品、買い物割引券、金券、ギフトカタログなどとバラエティに富んでいます。
ポイントは、早めに株を買っても、特定日ぎりぎりのタイミングで買っても、株主優待を受けるという点で違いがないことです。詳しく見ていきましょう。
1.2 株主優待を受けるために必要な手続きとは
権利確定日とは
さきほど、特定の日に株主になる必要があると述べました。これを「権利確定日」といいます。
権利確定日はほとんどの場合決算月と関係があります。典型的なケースは次の通りです。
- 決算期が2月末、権利確定日が2月末の最終営業日(平日)
- 決算月が2月末、権利確定日が2月末と8月末のそれぞれの最終営業日(平日)
- 決算期が3月末、権利確定日が3月末の最終営業日(平日)
- 決算月が3月末、権利確定日が3月末と9月末のそれぞれの最終営業日(平日)
- 決算期が12月末、権利確定日が12月末の最終営業日(平日)
- 決算月が12月末、権利確定日が6月末と9月末のそれぞれの最終営業日(平日)
株主優待でお得なものに小売企業は外食企業がありますが、これらは決算期が2月のケースが多いです。覚えておいてください。また稀なケースですが、決算が月末ではない銘柄もあります。そこで気になる銘柄を見つけたら、その企業のホームページの投資家・株主向けのページで一度確認してみてください。Yahoo!ファイナンスの個別企業情報のなかの「株主優待」ページでも確認が可能です。
月末の最後の平日から3日間平日を遡る日(権利付き最終売買日)までに株を買う
では、権利確定日に株主になるには、いつまでに株主になっておけばいいのでしょうか。
月末の最後の平日から、3日分平日をさかのぼった日までにその銘柄の株を買っておく必要があります。一般に「3営業日前まで」と言われますが、この場合の営業日とは株式市場で取引が行われている日、つまり土日祝を除いた平日を意味します。この3営業日前の日を「権利付き最終売買日」と呼びます。なお、株を買う証券会社の口座はどこであっても構いません。
具体例として2015年9月末権利確定の場合を考えてみましょう。
2015年9月25日(金) 権利付き最終売買日=権利確定日の3営業日前←遅くともこの日までに株を買う
2015年9月26日(土) 非営業日
2015年9月27日(日) 非営業日
2015年9月28日(月) 権利確定日の2営業日前
2015年9月29日(火) 権利確定日の1営業日前
2015年9月30日(水) 権利確定日
この場合9月30日は水曜日ですから、3営業日さかのぼると、土日をとばした9月25日(金)になります。買うタイミングは9月25日でも結構ですし、もっと以前からでも結構です。9月の株主優待を手に入れるには、9月25日までにその株を買って、翌営業日(この場合9月28日)を迎えればいいのです。買い忘れだけには気を付けてください。
以下に2016年までの月末権利確定日に対応する権利付き最終売買日を列挙しますので、参考にしてください。
2015年9月25日(金)
2015年10月27日(火)
2015年11月25日(水)
2015年12月25日(金)
2016年1月26日(火)
2016年2月24日(水)
2016年3月28日(月)
2016年4月25日(月)
2016年5月26日(木)
2016年6月27日(月)
2016年7月26日(火)
2016年8月26日(金)
2016年9月27日(火)
2016年10月26日(水)
2016年11月25日(金)
2016年12月27日(火)
権利確定日から2、3か月待つと待望の株主優待が届く
権利確定日から2、3か月は我慢して待ちましょう。特に作業はいりません。3月決算ですと6月ごろまでにお手元に株主優待券や優待商品、カタログなどが送られてきます。
1.3 長期株主や大口株主にはさらに有利な優待がつく場合がある
企業によっては、1年より2年、2年より3年と、より長く保有してくれた株主に対して、より手厚く優待をするところもあります。お気に入りの企業であればこうした制度はうれしいですよね。
一方、100株より1000株と、より多く保有している株主を、より手厚く優遇する企業もあります。お気に入りに企業のお気に入りの優待でしたら、株を多めに買うことも一考です。
2 株主優待を受ける上でぜひ知っておきたい注意点
2.1 ずっと株主でいる必要はない
「株主優待は欲しいけど、株式投資には自信がない。思わぬ損はしたくない」。こんな風に考える方も多いでしょう。一般的な場合、権利確定日である期末(あるいは中間期末)に株主であれば、その翌日にすぐ株を売却しても構いません(前のカレンダーの2015年9月末の例では9月28日に株式を売却しても構いません)。株主優待を受ける時点で株主である必要はないのです。たとえば、株主優待のエキスパートには、毎月毎月つぎつぎと決算期の異なる企業の株主になって優待をしっかり受けるという方がたくさんいらっしゃいます。
ただし、もしその企業の株主優待を継続して受けたいのであれば、いったん株を売却しても次の権利確定日までには必ず再度、株を購入しておくことをお忘れなく。
2.2 株主優待には期限がある
多くの株主優待では株主優待券が送られてきますが、まず期限があります。次の権利確定日あたりまで、つまり半年ないし1年というのが通例です。この期間に優待を上手に活用しなければもったいないですね。優待券が届いたら有効期限にマーカーを塗っておくといいかもしれません。
2.3 株主優待制度の内容が変更されたり、廃止されることもありうる
最近、魚力(7596)が株主優待制度を廃止したことが新聞で話題になりました。業績動向や、株主優待を受けることができない外国人投資家などの要請で、株主優待制度が縮小されたり、廃止されることもないわけではありません。権利確定日の前につどつど、株主優待の内容を確認しておくことが望ましいでしょう。
2.4 業績の悪い企業も株主優待制度を続けている企業があるので注意
配当は業績が悪いときに減らしたり見送られたりしますが、株主優待制度は業績の状態にかかわらず採用される可能性があります。しかし仮にこの会社が倒産してしまえば、株主優待が受けられなくなる可能性が出ますし、もし株を持っていれば含み損が膨らむ危険性もあります。
そこで簡単で結構ですので必ず業績もチェックしてください。赤字や低採算ではないのか、借入が多くないのかを必ず見ておきましょう。東洋経済新報社の会社四季報(書籍でも、証券会社のインターネットページの投資情報内にもあります)や日経会社情報の記述に目を通すのが近道です。仮に業績が心配でしたら無理して株を買わないこと、買ってもすぐに売却しましょう。
3 個人に人気のイオン(8267)の株主優待をみてみよう
3.1 イオンの株主優待は大人気
個人投資家に人気のイオンのケースを具体例として見ておきましょう。詳しく知りたい方は、イオンのウェブサイトの株主優待制度のページもご覧ください。権利確定日は2月末、8月末です。
3.2 イオンの株主優待のしくみ:優待を受けるまでの4ステップ
ステップ1:株主になってイオンオーナーズカードを手にいれる
まず2月末、8月末それぞれの最終営業日(つまり土日祝を除く平日)から3営業日前までに株主になっておきましょう。例えば、2016年2月の場合、最終営業日は2月29日(月)ですから権利確定日は2月24日(水)になります。
100株以上持っていれば優待を受けられますので、まずは100株を買いましょう。2016年9月の株価は1,800円前後ですから、仮にこの値段で買うとすると約18万円が投資額になります。
ステップ2:株主優待案内書が届く
それから約1か月待ちましょう。3月末、9月末ごろに株主優待の案内書が届きます。届いていなければ会社に連絡を取ってみてもいいですね。お手元に届きましたら、必要事項を記入して忘れずにすぐに返信してください。
ステップ3:イオンオーナーズカードが届いたら、日々の買い物の時に忘れずにレジで提示する
それからさらに1か月ほどで待望のイオンオーナーズカードが届きます。これをお買い物のたびにイオンの対象店舗で提示すると、キャッシュバックポイントが貯まります。ポイント付与に最低金額はありませんので、日々のちょっとしたお買い物でも忘れずに提示しましょう。ただし、ポイントが付くのは、累計のお買い物の金額が半年間で100万円までとなっています。なお、会費は無料です。
オーナーズカードの有効期限は3月から8月、および9月から2月までです。株式を継続保有していればオーナーズカードも自動継続されます。仮に、半年に一度の権利確定日の間にいったん株を売却し買い戻した場合でも、2月と8月の権利確定日に同一の株主として名寄せされ株主番号が変わらなければオーナーズカードはそのまま継続されます。
ステップ4:半年に一度キャッシュバックを受ける
半年たつと、明細と「返金引換証」が送られてきますので、イオンの店舗に持ち込んで現金で返金してもらうことになります。3月から8月に貯まったキャッシュバックポイントは10月に、9月から2月の分は4月に返金になります。
3.3 イオンの株主優待の4つのメリット
メリット1:毎日の買い物金額に対してキャッシュバックポイントが貯まる
レジでイオンオーナーズカードを提示すると、100株以上500株未満の株主であれば買い物金額の3%が、それ以上の株主の場合、保有株数に応じて4%,5%,7%がキャッシュバックポイントとして貯まります。集計はイオンがしてくれます。
メリット2:「お客様感謝デー」でもお得に
毎月20日、30日の「お客様感謝デー」では5%オフの特典に加えて、イオンオーナーズカードによるキャッシュバックポイントが貯まる、二重にお得なしくみになっています。
メリット3:お会計時割引・優待料金も
イオンイーハート、イオンシネマ、タルボット、イオンペットなどでも割引などが受けられます。
メリット4:さらに長期保有株主にはギフトカードの優遇も
3年以上継続して保有し、かつ毎年2月末日時点の株主名簿に基づき、1,000株以上保有をしていると、保有株式数に応じたイオンギフトカード(2,000円以上になります)をもらえます。
いかがですか。ご近所のイオンを愛用されている方にはなかなか魅力的ではないでしょうか。
4 インターネットを活用して株主優待を選ぼう
証券会社のホームページでは、決算月別に株主優待の制度を一覧することができるようになっています。また、Yahoo!ファイナンスでも同様のリストを見ることができます。
気になる株主優待が見つかったら、是非その企業のウェブサイトで正確な制度の内容を確認することをお勧めします。
5 プロも気になる厳選優待銘柄10選
では、みなさんの株主優待ライフの手がかりとして、アナリスト目線で選んだ厳選10銘柄をご紹介したいと思います。優待の魅力度、投資予算、業績、株価の水準を総合的に検討して選んでいますので、筆者も大変魅力を感じています。興味のある会社がみつかりましたら、ぜひ、その企業のウェブサイトで内容をご確認ください。
ビックカメラ(3048)
- 投資予算 約10万円
- 最低株数 100株
- 権利確定日 2月末、8月末
- 優待内容 お買い物優待券
- 100株投資し2月末の権利確定日を迎えると、1,000円額面のお買い物優待券2枚が、8月末の権利確定日の場合には1枚が送られてきます。グループ傘下のコジマの店頭でもご利用になれます。
吉野家ホールディングス(9861)
- 投資予算 約15万円
- 最低株数 100株
- 権利確定日 2月末、8月末
- 優待内容 300円サービス券
- 100株投資し権利確定日を迎えると300円サービス券が10枚送られてきます。
イオン(8267)
- 投資予算 約20万円
- 最低株数 100株
- 権利確定日 2月末、8月末
- 優待内容 オーナーズカード
- 100株投資し権利確定日を迎えると、オーナーズカードが送られてきます。これをイオンの店舗などで買い物する時にレジで提示します。すると半年の買い物額累計(最大100万円まで)の3%をキャッシュバックしてもらえます。
J.フロント リテイリング(3086)
- 投資予算 約20万円
- 最低株数 100株
- 権利確定日 2月末、8月末
- 優待内容 買い物優待カード
- 100株投資し2月末の権利確定日を迎えると、1年間利用できるお買い物優待カードが届き、50万円までの買い物について10%の割引になります。8月末の権利確定日に初めて株主になった場合には翌年5月末までに利用可能なお買い物優待カードが届き、25万円までの買い物について10%の割引になります。これらのカードは大丸、松坂屋で利用できます。さらにパルコのお買い物優待券も送られてきます。
ヤマダ電機(9831)
- 投資予算 約5万円
- 最低株数 100株
- 権利確定日 9月末、3月末
- 優待内容 優待割引券(500円割引)
- 100株投資し9月の権利確定日を迎えると、1,000円以上の買い物につき500円の割引を受けられる優待割引券を2枚(3月の権利確定分)ないし4枚(9月の権利確定分)入手できます。
三越伊勢丹ホールディングス(3099)
- 投資予算 約20万円
- 最低株数 100株
- 権利確定日 9月末、3月末
- 優待内容 買い物優待カード
- 100株投資し権利確定日を迎えると、約半年間利用できる株主様ご優待カードが届き、15万円までの買い物について10%の割引になります。
オリックス(8591)
- 投資予算 約20万円
- 最低株数 100株
- 権利確定日 3月末、9月末
- 優待内容 株主カード(3月末、9月末)、カタログギフト(3月末のみ)
- 100株投資し権利確定日を迎えると、株主優待カードが届き、京セラドーム大阪でのプロ野球観戦やホテル、水族館、レンタカーなどグループ内のサービスの割引を受けられます。注目は新たに始まったカタログギフトで、3月末の権利確定日の株主はカタログから5,000円相当の日本の名産品を選べます。
ANAホールディングス(9202)
- 投資予算 約35万円
- 最低株数 1,000株
- 権利確定日 9月末、3月末
- 優待内容 株主優待番号案内書(航空券割引に使用)とグループ各社の優待券
- 1,000株投資し権利確定日を迎えると、国内線片道を普通料金の半額で利用できます。またグループホテルの宿泊料10%割引や空港内ショップでの買い物の10%割引も受けられます。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)
- 投資予算 約10万円
- 最低株数 100株
- 権利確定日 9月末
- 優待内容 オリジナルグッズ、金融サービス優待クーポン等
- 100株投資し権利確定日を迎えると、タオルやパスケースなどのグッズが届きます。500株以上保有すると、これに加えて同銀行グループでの取引で手数料や金利の優遇が得られます。同行を利用される方には良いでしょう。
トリドール(3397)
- 投資予算 約15万円
- 最低株数 100株
- 権利確定日 9月末
- 優待内容 100円割引券
- 100株投資し権利確定日を迎えると、100円割引券20枚が送られてきます。うどんチェーンや焼き鳥チェーンでの飲食に利用できます。
注:投資予算は2015年9月現在の株価で概算
6 まとめ
いかがでしたか。権利確定日までに株を購入し株主になっておけば株主優待のメリットを受けられます。配当を待つように、株主優待が届くのを待てばよいのです。また、株主優待を利用するときに株主である必要はありません。権利確定日以降は好きな時に株を売ってしまっても構いません。これなら株式投資の初心者の方でも取り組みやすいですね。
すでに証券会社に口座をお持ちでしたらその口座を利用してください。これから口座を開くのでしたら、少なくとも4~7営業日かかりますのでお手続きはお早めになさってください。
みなさんも、「私のいち押し株主優待」を見つけて、有効活用していただけると幸いです。
なお、これから証券会社に口座を開設されるという方は、以下もご参考にしてください。