就活生も企業のステークホルダー
就活生の中には、自分がまだ投資家でもないのに、IR情報を読む意味があるのか疑問をお持ちの方が少なくないと思います。また、IRは投資を行う人向けの情報で、就活生の私には関係がない、と思われる方もいるでしょう。でも、それは大きな誤りです。
実際にIR情報のホームページを見ると、多くの企業が、社長からのトップメッセージを掲載し、そこでの標題が、「あらゆるステークホルダーに方へ」となっていることに気づくと思います。
企業のステークホルダーは投資家だけではない
ステークホルダーとは、「利害関係者」という意味になります。対象企業に対して、何らかの関係を持つ人という意味になり、そこには、投資家だけではなく、従業員、労働組合、顧客、仕入れ先、取引金融機関、地域コミュニティ、政府など多くが含まれます。
こうした考えは、企業は社会的な存在という概念から生まれたもので、特定のステークホルダーだけの利害を優先しては、企業の長期的な成長が見込めないというCSR(企業の社会的責任)の考えに基づいています。
例えば、投資家の利益の最大化だけを考え、それ以外のステークホルダーの意向を無視するA社について考えてみましょう。A社は、従業員への報酬を極端に抑え、環境に悪影響を与える汚染水を除去するための設備投資も中止し、そこで得られた利益(剰余金)を株主への配当へ全額回したとします。一時的に、株主は配当の増加で潤うかもしれませんが、優秀な従業員は離反し、行政からは環境破壊について訴えられ、社会全般からの評判の低下で商品が売れなくなる、という結末を予想することは容易なことです。そして、業績が悪化して、結果的には、投資家への配当も減っていくことは明らかと言えましょう。
短期的な投資家や投機家(ギャンブラー)は別として、投資家父さんのような長期投資を目指す個人投資家にとっても、投資家だけを優遇してもらうことは、逆に「ありがた迷惑」となってしまうのです。短期的な利益のために長期的な成長機会が失われてしまうからです。
就活生からみて投資家を大事にしない会社も要注意
一方、就活生のあなたから見て、この会社は投資家を大切にしていない、あるいは、投資家の立場から見てあまり利益の成長性が感じられなかった場合も要注意です。従業員の雇用を過度に大切にするばかりに、不採算の事業をいつまでも温存している、「働かないおじさん」ばかりの会社である可能性があるからです。
投資家、従業員、顧客、仕入れ先、社会から全てから愛されることは容易なことではありませんが、要は、そうしたステークホルダーに対してバランスよく目配りが効いている会社が、投資家にも、就活生にも望ましい会社ということになります。これは「きれいごと」ではなく、企業は、「社会的な存在」であるため、CSRにも注意を払うことが、持続的な成長のための必要不可欠な条件だからです。
投資家父さんは、就活生の娘、息子に対して過度に過保護になる必要はありませんが、こうした観点からもアドバイスをしてあげてください。「企業を選ぶ視点」について興味がある方は、「投資の神様ウォーレン・バフェット」や、「身近な企業に投資する」もあわせてご一読ください。
次回は、「成長株投資と就活」について考えます。
2015年4月23日 13:00 公開
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