株式投資の大きな魅力の1つが配当です。配当とは、その株式を保有することで得られるリターンを指しますが、低金利がさらに進む中、改めて配当への注目が高まっています。ただし、配当はもらえない場合もあります。また、配当の高い銘柄と安い銘柄があります。少し複雑な点もありますが、要点を押さえれば配当に感じる魅力も高まってきます。
この記事では、配当の意味だけにとどまらず、配当をもらえる条件、配当の受け取り方、配当に課せられる税金についても説明していきます。株式投資の1つのリターンである配当について詳しく知りたい方、あるいは、高配当銘柄に興味ある方には、非常に参考になりますので、ぜひ活用してみましょう。
目次
1 配当に関する簡単な知識
1.1 配当は株主がもらう利益の分配
配当とは、株主が利益配当請求権に基づいて受け取れる利益の分配のことです。一般に「配当」という場合、現金によって支払われる現金配当を指します。配当は、会社の利益を源泉として支払われるものであるため、その金額は一定ではありません。株式を保有している会社の業績や、その会社の配当に対する考え方などによって、金額は全く違ってきます。
1.2 配当をもらえる回数
株式を発行している会社(株式会社)が配当を支払うのは、多くの場合、年に1回、もしくは2回となっています。支払い時期は、年に1回支払いの場合、その会社の株主総会が終わった後すぐとなります。また、年2回支払う場合は、株主総会の後、及び、その半年後(中間決算後)になるケースが多いようです。
1.3 配当が高いか安いかを判断する指標
配当の額は、株価の高い銘柄ほど金額が多くなる傾向があります。ただし、その配当をもらうためには、投資金額も大きくなってしまいます。そこで、その会社が出す配当が高いか安いかを判断する1つの指標として、次の式で算出される「配当利回り」を用います。
配当利回り(%)=1株当たり配当金÷株価
この配当利回りが高いほど、配当の高い銘柄と言えます。
実際に具体例で見てみましょう。大手自動車メーカーのホンダと日産自動車で比較してみます。現在、
- ホンダの配当は88円、株価は2,900円
- 日産自動車の配当は42円、株価は950円
となっています。なお、配当金額は2016年3月期の会社予想を用いています。
配当の額はホンダのほうが多いですが、それをもらうためには日産株の約3倍の資金を投じてホンダ株を買う必要があります。そこで、この2社の配当利回り(%)で見ると、
- ホンダ=88÷2,900=3.0%
- 日産自動車=42÷950=4.4%
となり、日産の配当利回りはホンダよりもかなり高くなります。つまり、日産のほうが高配当銘柄と言うことになります。
1.4 銀行預金の利息より圧倒的に高い配当利回り
現在、東証1部上場銘柄の平均配当利回りは1.7%前後となっています。これは、たとえば、銀行の定期預金の利回り(1年定期で0.010%)と比べても、比較にならないくらい非常に高い数字となっています。最近は、株主に対して配当をより多く出す会社が増えているため、この配当利回りは上昇基調にあります。
1.5 株主でも配当をもらえない場合
株主であっても、必ず配当をもらえるとは限りません。配当は利益の分配ですから、その株式を発行している会社が利益を出していない場合(赤字の場合)、株主がもらえる配当は0円になることがほとんどです。また、会社が利益を計上していても、財務体質が悪化している場合には配当が出ないことがあります。このように、株式会社が株主へ配当を出さないことを「無配」と言います。なお、東証1部に上場している会社の約1割は無配となっています。
ただし、会社が利益を計上していなくても、過去に蓄えた利益(これを利益剰余金と言います)が潤沢である場合、株主に配当が出されることもあります。しかし、これは非常に少ないケースとなっています。
2 配当をもらえる条件
2.1 期末の株主名簿への記載
配当をもらうためには、その株式会社の株主であることが絶対条件です。ただ、ここでいう「株主である」というのは、手元や証券会社の口座に保有しているという意味ではありません。「株主である」ということは、その会社が管理する株主名簿に登録(記載)されていることです。
配当が年1回支払の場合、株式会社の本決算期末(例えば、3月末や12月末)において、株式名簿に登録されていることが必要不可欠です。同じように、年2回支払の場合、本決算期末と半年後の中間期末に株主名簿に記載されている必要があります。
2.2 株主名簿に記載されるためには
株主名簿に記載されるためには、「権利確定日」と呼ばれる決算期末日(例えば、3月末や12月末)にその会社の株式を保有していなければなりません。そのためには、権利確定日から数えて4営業日前までに株式を保有している、または、4営業日前までに新たに株式購入の手続きを済ませていることが必要です。株式購入の手続きとは、証券会社に買い注文を出して約定が完了した状態を指します。
この権利確定日から数えて4営業日前の日を「権利付き最終日」と言います。そして、権利付き最終日の翌営業日を「権利落ち日」と呼びます。権利落ち日に株式を購入しても、その決算期の配当をもらうことはできません。
たとえば、3月31日に株主名簿に記載されるためには、1)4営業日前の3月28日の時点で既に株主である、2)4営業日前の3月28日までに買い注文を成立させている(約定が完了)、のどちらかが必要です。これは、たとえば3月29日に株式を売却したとしても、3月末には株主名簿に記載されていることになります。そのため、配当の受け取りを目的に、3月28日に購入して、3月29日に売却するような手法も可能となります。
3 配当金の受け取り方法
3.1 配当の入金先は証券会社の取引口座
会社が配当を出すと、まず株主へ通知書が送られてきますが、それとほぼ同じタイミングで、証券会社に開設している口座へ入金される場合がほとんどです。配当金が証券会社の口座に入金されると、証券会社からその旨の連絡があります。ただし、対面型証券会社の場合、株式の売買の約定の時のように、電話での連絡ではないこともあります。ネット証券の場合は、自身の口座にメールで連絡が来る場合が多いようです。
3.2 配当金に課せられる税金
株主がもらえる配当金は、「配当所得」として課税対象となります。現在、上場企業の配当の場合、約20%(正確には20.315%)の税金が課せられます。この課税率は、銀行預金の利息に課せられている税率と同じです。銀行預金の利息が微々たる金額のため、徴収されている税金が目立たないだけなのです。
3.3 確定申告等の手続き方法
皆さんの中には、“税金の支払い手続きは面倒だな”と思っている人も多いのではないでしょうか。配当金は、皆さんが証券会社に持っている取引口座に入金されますが、その際、税金を差し引かれた金額が入金されます。つまり、皆さんは何もする必要がなく、口座のある証券会社が全ての手続きを行ってくれるのです。非常に便利であり、一切の心配は無用となります。ただし、その口座が「特定口座」であることが必要不可欠です。
参考:証券会社に口座開設する前に知っておきたい3つのポイント
4 ますます注目される高配当利回り銘柄への投資
2016年1月末、日本銀行によるマイナス金利導入が発表されました。その後、メガバンクを始めとする金融機関が、相次いで預金金利の引き下げを行っています。預貯金の利息がさらに減ってくる中、株式投資における配当への注目度がますます高まるでしょう。
4.1 インターネットの配当利回りランキングを活用
「1.3配当が高いか安いかを判断する指標」で説明した通り、配当の大きい銘柄は、配当の絶対額で判断するものではなく、配当利回りと呼ばれる指標で判断します。株価が変動すると、配当利回りも変化します。現在の株価で、どの銘柄の配当利回りが高いのかを探して、投資の参考にするのがよいでしょう。
インターネットの投資情報サイトには、その日その時における様々なランキング(値上がり率、値下がり率など)を表示する機能があります。ほとんどの場合、その中に「配当利回り」というランキングがあるはずです。その項目にアクセスすることで簡単に表示されます。また、ネット証券会社に口座がある場合は、そのネット証券のサイトにも同じような機能が設定されています。
5 まとめ
配当とは、株主が受け取れる利益の分配を指し、株式投資で得られるリターンの1つです。ただし、その会社が利益を出していない場合など、配当をもらえないケースもあります。そして、配当をもらうためには期末に株主名簿に記載されている必要がありますが、株主名簿に記載されるためには、権利付き最終日に株を購入することでも可能となります。
確実に高い配当を得たい時は、投資情報サイトの配当利回りランキングなどを参考にして、権利付き最終日に購入する等の手法も有効となります。マイナス金利の導入などで預金金利がさらに低下する中、高配当を狙った株式投資がますます注目されましょう。
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