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持っている株が半値になってしまった!
株式投資に入門して約2年の経験がある個人投資家のAさんは、浜松ホトニクス(6965)の株式を2月12日に6,270円で100株購入しました(購入代金は627,000円。売買手数料含まず)。理由は、マネックス証券の「投資情報」に掲載されているLongineの決算速報レポートを読んで興味が湧いたためでした。その後、株価は順調に上昇し、1か月後の3月12日には7,070円を付けました。上昇率は13%となり、Aさんの含み益(評価益)は80,000円に達したのです。
Aさんは、日々の仕事が忙しく、その後は株価をチェックできませんでした。それから約1か月後の4月14日、PCで株価を見るとビックリしました。前日13日の終値は3,750円となっていたからです。「じぇじぇじぇ」(少し古い)と言ったかは解りませんが、この1か月間で半分近い株価になっていたのです。
Aさんは茫然自失です。ところが、ご自身のネット証券での口座残高をチェックすると、約20%の含み益となっていました。1か月前よりも含み益が増えている、つまり、株価がさらに上昇したことになります。いったい、Aさんの保有している浜松ホトニクスに、何が起こったのでしょうか?
株式分割を行っても時価総額は変わらない
その答えは「株式分割」です。浜松ホトニクスは3月31日を基準日、4月1日を効力発生日とする1:2の株式分割を行ったのです。1:2の株式分割は、今持っている1株が2株になるということを意味しています。
株式分割とは、文字通り、株式を「分割」することです。浜松ホトニクスの場合ですと、株式分割の効力が発生する4月1日より、それまで8,376万株であった発行済株式数が2倍の1億6,753万株に増加しています。
ここで重要なことは、株価は株式分割後に半分に“下落”しますが、発行済株式数が2倍に増加するため、時価総額(株価×発行済株式数)は変化していない、ということです。
Aさんの保有株も、一見すると、株価の大幅下落により含み損を抱えたと思われがちです。しかし、株式分割後の保有株数は2倍の200株に増加していますので、Aさんが保有する株式の評価価額(保有株数×株価)に影響はなかったことになります。4月13日の終値3,750円は、株式分割前の株価に修正すると、2倍の7,500円となるからです。
株式分割は、なぜ、行われるのか?
ところで、なぜ、浜松ホトニクスは株式分割を行ったのでしょうか?
同社の株式分割に関するプレスリリースによると「最近の当社の株価水準を踏まえて、株式分割を行い投資単位当たりの金額を引き下げることにより、当社株式の流動性の向上と投資家層の更なる拡大を目的とするものであります」と記載されています。
キーワードは「流動性の向上」です。
同社の最少売買単位は100株ですので、分割前では60~80万円程度の投資資金が必要でしたが、分割後は半分の30万円~40万円で購入が可能となっています。このため、より多くの投資家が買いやすくなり、売買が活発になることが期待できます。
株式分割のニュースは“買い”シグナルか?
株式分割は、発行済み株数の変更だけであって、その銘柄の将来の業績に何ら影響を与えるものではありません。このため、「ファンダメンタルズ」としては中立な要因として捉えるべきです。
ただし、株式の需給という「テクニカル」な側面では、最少取引金額が低下することで、より多くの投資家の売買が期待できるため、“買い”材料になる可能性があります。
また、一般的には、発行済株式数の増加は株式名簿の管理などの事務作業の増加を招くため、発行企業にとっては、避けたいというのが本音かもしれません。それにもかかわらず、株式分割を行うということは、より多くの投資家に株式を保有して欲しいという考えがあるためです。そして、その対象となっているのは、個人投資家であることは容易に想像がつくことです。
これは、言い換えれば、“将来に対して自信がある”というシグナル(メッセージ)を、「株式分割」というイベントを通して発信しているということになります。もちろん、それぞれ、個別のケースを精査する必要があるものの、こうした可能性も頭の片隅に入れておくことも重要でしょう。
下記のマネックス証券の画面のように、株式分割を予定している企業の一覧はネット証券のサイトから簡単に調べることが可能です。是非、一度、覗いてみてください。
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