増配・自社株買いの発表で株価が上がるのはなぜか?

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目次

株価への影響が大きい株主還元策に関するニュース

株式投資に入門して多少の経験を積んだ方であれば、“増配や自社株買いで株価が上昇”といったニュースを目にしたことがあると思います。

配当や自社株買いに対する会社側の方針を総称して「株主還元策」と呼びます。小難しい話は割愛しますが、実はファイナンス理論で「株主還元が企業価値にプラス要因になる」と定義されているわけではないのです。ではなぜ、増配や自社株(自己株)買いの発表で株価が上がることが多いのでしょうか?

増配のニュースで株価が上昇する理由

1. 将来業績に対する期待の上昇

増配が将来の業績に対する経営陣の自信の表れと受け取られる傾向にある点が挙げられます。上場企業経営者の心理として、減配というのは極力避けたいものです。そのため、投資家は増配の発表をもって、経営陣が今後の業績に対して明るい見通しを持っていると推測する傾向にあるのです。

2. 経営陣の株主還元スタンス改善期待

増配により投資家は経営陣が株主還元に対して熱心になった可能性を期待します。投資家は、企業が稼いだ利益を無策のまま社内に溜め込んでいくことを嫌います。成長するための投資に使うか、株主に還元するか、どちらかにしてほしいと考える傾向が強いのです。

3. 配当が好きな投資家の存在

配当利回りを気にする投資家が一定数いることが挙げられます。配当利回りというのは、配当÷株価で計算されます。例えば、10万円投資して、年3,000円の配当が得られれば、配当利回りは3%。業績が安定した企業の株を配当目当てに持ち続ける投資家にとっては、増配は何よりも嬉しいニュースです。

自社株(自己株)買いのニュースで株価が上昇する理由

1. EPS増加→株価上昇という連想

自社株買いにより発行済株式数が減少すると、一株当たりの利益(EPS)が増加します。理論上はEPSの上昇だけをもって、企業価値が上昇したということはできないのですが、大半の市場参加者は株価の割安/割高の判断にPER(株価/EPS)を使っているのが実態です。

株価=EPS×PERですから、自社株買いの前後でPERに変化がないと仮定すると、EPSが上がった分、株価も上昇するとの連想が働く傾向にあるのです。

2. 経営陣の株主還元スタンス改善期待

前述の増配のケースと同じで、自社株買いにより投資家は経営陣が株主還元に対して熱心になった可能性を期待します。投資家は、企業が稼いだ利益を無策のまま社内に溜め込んでいくことを嫌います。成長するための投資に使うか、株主に還元するか、どちらかにしてほしいと考える傾向が強いのです。

3. 株式の需給バランス改善期待

上場企業が発行する株式の全てが市場に流通しているわけではありません。役員、金融機関や取引先、従業員持ち株会など、よほどのことがない限り株の保有を続ける株主(安定株主と言います)も相当数います。

自社株買いをするということは、自社で株式を保有するということですから、安定株主が増え、市場に流通する株式が減ると考えられます。流通する株式数が減れば、その株式の「レア度」がアップします。

まとめ

ケースバイケースで定説はありませんが、経営の効率性の改善や、経営者と市場の間での情報の非対称性の解消という観点で、増配・自社株(自己株)買いが好意的に受け止められるケースが多いという実感があります。

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