金利上昇により業績が悪影響を受ける「金利敏感株」入門
日本は長期にわたり低金利が続いたため、それが普通かのような印象を持っている人が少なくなく、金利上昇に対する備えが不足しているかもしれません。
金利上昇は、割引率の上昇による理論株価の下落だけではなく、有利子負債を抱える多くの企業では、支払金利の増加を引き起こす多ため、利益の減少も想定されます。典型例は、有利子負債(利子の発生する借金)が多い「金利敏感株セクター」とよばれる電気・ガス業、電鉄株などの業種です。
これらの業種は、半導体メーカーのように、突然、受注・売上が急減する可能性は極めて低いのが特徴です。また、売上が安定しているため、株主資本をそれほど厚くする必要性はありません。それでも、金利が上昇に転じた場合は、影響が免れないことには注意が必要です。
また、これ以外のセクターでも借入比率が高い企業は、同一セクターの他銘柄に比べて株価はアンダーパフォーム(相対的に株価パフォーマンスが劣後)する可能性も想定されます。
良い金利上昇、悪い金利上昇
住宅・不動産、自動車業界なども、金利上昇によりダメージを受けることがあります。当該企業は有利子負債も少なく金利上昇の影響を受けなくても、そのお客さんが借入やローンなどで、当該企業の製品やサービスを購入する比率が高いため、金利上昇の影響を間接的に受ける可能性があるのです。
ただし、こうした企業の場合、一概に金利上昇=業績悪化とは言い切れない悩ましさがあります。その理由は、金利上昇には「良い金利上昇」と、「悪い金利上昇」あるためです。
「良い金利上昇」というのは、景気拡大に伴う金利上昇です。経済活動が活発化し、資金需要が高まった結果としての金利上昇ともいえます。あるいは、景気が拡大傾向にあるため、政府、中央銀行は金融政策を緩和から引き締め抵抗に転換できたのかもしれません。こうした場合であれば、金利が上昇しても、借入、ローンに依存した顧客も、必ずしも、消費を落とさず、結果的に、売上は減速しないで済むことも考えられます。
一方、景気が悪いのに信用不安などから金利が上昇に向かう「悪い金利上昇」の場合は、躊躇せず、株式投資のウエイトを極端に減らすか、あるいは、財務内容がよく、どのような環境下でも必要とされる財・サービスを提供している優良株、あるいはデフェンシブ株にシフトし、嵐が過ぎ去るのを待ちましょう。
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