ABCマートとチヨダのIR情報で理解する小売り株への投資手法

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目次

株初心者におすすめの「身近な企業」への投資

株1(カブワン)」の「身近な企業に投資する」という特集では、いかに自分の良く知る企業に投資をすることで、プロの投資家にも勝つことができる例をお伝えします。

ここでは、ネット証券口座を解説したばかりの55歳の主婦・相場翔子(アイバ・ショウコ)さんが米系投資信託会社で35年の株式運用経験があり、現在は不動産オーナーとして客観的に日本の経済の行く末を見守る65歳のメンター・株1博士に株式投資の素朴な疑問をぶつけています。それでは聞き耳を立ててみましょう。

フィデリティのピーター・リンチも流行に敏感

相場:博士、いま、フィデリティのピーター・リンチが書いた「株で勝つ」という本を読んでいるのだけれども、ここにも、個人投資家は自分にとって身近な企業でプロよりも早く有望銘柄を見つけることができると書いてあるわ。これって、プロ中のプロの有名投資家が、個人投資家も株式投資で成功するチャンスがあるって言っているのよね。

株1博士:その通りだよ。ピーターもよく家族に面白そうな企業や商品について質問していたそうだよ。

相場:えっ、博士はピーターを知っているの?

株1博士:ははは。個人的には、フィデリティで欧州や中国で運用していたアンソニー・ボルトンの方が好きな運用者だけどね。

相場:でも、毎日株価をチェックしたり、企業取材をしたりしている証券アナリストやファンドマネージャーに、私みたな株初心者を含めた個人投資家が情報で勝てるとは思わないけど…。

株1博士:そんなことはないよ。彼らは、いわゆる“公開情報”を分析して運用を行っている。つまり、過去のデータに基づいて分析していることになる。いま、目前で起きていることには実は疎かったりもする。

相場:どういうことかしら。

株1博士:例えば、小売業を見るときには、既存店の売上を分析するのだが、これは当然ながら毎月データが集計され、しばらく後に開示される。つまり、データが集計されて公開されるまでに時差が生じる。もし、それに先んじれば、プロの投資家に対して勝つことができるとは思わないかい。

相場:確かにそうね。でも、それって毎日お店に通ってお客の数とか売れ行きを観察するということなの?

株1博士:まあ、そういうことかな。

相場:わたしだって、そこまで暇じゃないわ。

株1博士:ただ、毎日オフィスでブルムバーグ端末の情報を見て、既存店売上高を議論しているよりも、実際にお店に足を運ぶ方がはるかに役に立つところがあると思うがね。

ABCマートで小売り株投資を学ぶ

相場:でも、プロの投資家や証券アナリストが小売業をどうやって分析しているかを知りたくなってきたわ。博士、もう少し基礎から詳しく教えてくれないかしら。

株1博士:よし、ではどの企業を例に分析するかのう。好きな企業をいってみなさい。

相場:そうね、私、最近ジョギングをはじめたからランニングシューズを選びにABCマートに行ったいのでABCマートはどうかしら。

株1博士:では、ABCマートのウェッブサイトをのぞいてみるとしよう。ヤフーやグーグルで「ABCマート IR」と入力して、検索してみてごらん。

相場:検索したわよ。でも、IRって、そもそもどういう意味があるの。

株1博士:IRとは、インベスター・リレーションズの略で、投資家向けの情報は各社のIRサイトに掲載されている。そこをのぞけば、相当いろいろなことが分かるはずだよ(IRについてもう少し知りたい方は「就活投資家を目指そう!」も参考にしてください)。

相場:ほんとね。いろいろなデータが載っているのね。

株1博士:オムロンやコニカミノルタのIRサイトには、株1の執筆や監修をしているLongine(ロンジン)が関わっている記事もあるので、是非のぞいてみるといい。

相場:ところで、「ABCマート IR」と検索したあとは、どうすればいいの。

株1博士:ABCマートの検索結果が出てくるから、「IR情報|エービーシー・マート」をクリック。そして、そのサイトの右に表示される「月次情報」をクリック。

相場:「2015年2月期月次情報(直近の状況)」というのが一番上にあるわ。

株1博士:それをクリックだ!PDFファイルが立ち上がるはずだ。これこそ、分析の基礎になる重要な情報なのだよ。

相場:ファイルが開いたわ。これはどう見ればよいのかしら?

株1博士:そこにある、「既存店」の「客数」と「客単価」を見てみてくれ。それが小売店を初めにチェックする基礎となるポイントだ。そこに出ている数字は、各月の前年度との比較だ。例えば、2015年2月の既存店データでいえば、客数は2014年2月と比較して▲2.3%減少していて、客単価が+9.2%上昇していることを意味している。つまり、お客の数は減っているけれども、売れる商品の値段が上がっているという理解ができる。結果、既存店売上高は+6.7%増加していることになる。

相場:なるほど、売上高も分解するといろいろなことが分かるのね。

株1博士:相場さんは今日も株初心者とは思えないするどさだなぁ。分析は、実は分解から始まる。何事も分解できるところまで分解すると良い。実は、既存店売上高も、「客数」と「客単価」と2つに分けているが、欧米の証券アナリストはさらに細かく分析する。

相場:これ以上どういう風に分解できるのかしら。

株1博士:客単価は、「買い上げ点数」とその「平均単価」まで分解できる。これを「プロダクト・ミックス」といってさらに分解することもある。まあ、ここでは、そこまでできないので、また議論することとしよう。

相場:それと、プロはどういう分析をするのかしら。まさか既存店売上高だけということはないわよね。

株1博士:ちゃんとした投資家は、さすがにそれだけではないぞ。ははは。次に重要なのは新規出店や閉店する店(スクラップと呼ぶ)の数だ。増える店と閉店する店の数や時期を確認しながら会社全体の売上を予測する。このときに、どれくらいの店の大きさや集客がどの程度できるのか、などを確認する。この辺りは会社に取材ができる証券アナリストが有利な点かなぁ。

相場:なんだかそこまで分析するのはめんどうだわ。

株1博士:そう思うなぁ、私も。であれば、そうした取材をし、収益予想モデルを作っているアナリストレポートを見れば良い。マネックス証券では世界的にも有数の投資銀行JPモルガン証券のアナリストレポートが、口座を開設していれば無料で読めるので、役に立つこともあると思う。相場さんのような株初心者でも大丈夫だと思うな。実際に配信されるのは、プロの投資家が読める時期よりもタイミングは少し遅れるが、じっくり運用する投資家向けには全く問題ないと思う。

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相場:ここから先は興味本位で聞くけど、あとはどんな分析をするの。

株1博士:あとは、新規出店の際のROI(Return on Investment, 投資利益率)などは要注目だ。これは、正確な数字は会社に聞かないと分からないが、会社全体の数字は計算することはある程度できるので、その数字が新規出店でどの程度の水準にあるかなどは議論できると面白い。小売店は不動産を借り、その上で商売をすることになる。ROIの発想は欠かせない。

競合企業のチヨダも分析してみる

相場:競合企業の分析はしなくてよいのかしら。

株1博士:おー、すっかり細かな議論で話をするのを忘れていた。それは非常に重要なポイントだ。チヨダなどはじっくり分析する必要がある。ABCマートの場合と同じように「チヨダ IR」と検索してくれ。

相場:したわ。あ、月次情報が同じようにあるけど、4月の速報が載っているわ。速報とはなっているけど、あれ、2015年4月の客数、客単価が大きく回復している。3月は昨年の消費税増税の反動があったと思うけど、4月は好調だったみたい。

株1博士:少しは、調査になれてきたようだなぁ。同じ業界でも月次の開示タイミングがずれたりするので、別の企業のデータで投資先企業の状況分析はできることもある。ちょっと株初心者のレベルを超えるかもしれないが、こうした基礎を積み重ねることは、想像する楽しみができて楽しい作業だ。

相場:会社の分析をする方法は分かってきたわ。もっともっと調査方法知りたいわ。

株1博士:では、次はどの産業にするかのぉ。

2015年5月2日 17:15 公開

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