なぜ業績予想が黒字の銘柄が決算発表翌日にストップ安になるのか?

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目次

個人投資家の目の前にある投資情報格差をいかに飛び越えるか

株式投資に情報格差はつきもの。長年株式市場で経験のあるLongine(ロンジン)の証券アナリストが解説する「株1(カブワン)」ではその投資情報格差を埋めていきたいと思います。

今回は、株式投資を始めようとネット証券に口座を作ったばかりの55歳の主婦・相場翔子(アイバ・ショウコ)さんが、株式のポートフォリオマネージャーとして35年の経験がある株1博士と今日も新浦安のマンション1階のラウンジで立ち話をしています。いつものように、ちょっと聞き耳を立ててみましょうか。

なぜ株はストップ高、ストップ安になるのか

相場:博士、自分にとって馴染みのある企業に投資をすることは、私のような株式投資の経験がないような個人投資家でも、プロの投資家に対して情報の優位性があることがわかってきました。博士のおかげです、本当にありがとうございました。

株1博士:おー、それは良かった。それでは、もう自分で銘柄を選択し、ネット証券で発注はできたのかな。

相場:それが、実は、まだ…なのです。博士から、個人投資家でも株式投資はできるという話を聞いてきましたが、そうはいっても、個人投資家がアクセスできる上場企業の情報は限られている気がして怖いのです。

株1博士:具体的に、自分が何をわかっていないと思っているのかな?

相場:例えば、毎年4月の終わりから5月にかけて企業の本決算が発表されるけど、その決算数字がどういう意味を持っているのか、どう解釈すればよいのか、全然わからないわ。決算発表翌日の株価は、銘柄によってはストップ高になったり、ストップ安になったりしているけど、なぜそのような荒っぽい値動きになっているのか分からないのです。

株1博士:確かに、決算発表の翌日などは、特に値動きが激しくなる傾向が強いね。相場さんは怖いと思っているかもしれないけれど、そうした派手な値動きを好む投資家も多いのだよ。上手く売買すれば、1日で大きく儲けたりすることもできるからなぁ。1日に何度も売買することを「日計り取引」と言うのだが、これを得意とするヘッジファンドなどは、「決算プレイ」などと呼んで積極的に取引をしているみたいだ。まあ、当然1日で大きく損をすることもあるけれどもな。

相場:今回の決算では、富士通やベネッセが決算発表翌日に一時ストップ安をつけているのを見て、どうしてなのと思ったわ。両方とも時価総額の大きな銘柄なのに、1日で▲18%近く下落するなんて、本当にびっくりしたわ。

株1博士:相場さん、なぜだと思う?

相場:私、博士に言われたとおり、「富士通 IR」、「ベネッセ IR」とヤフーで検索して、決算内容を確認してみました。

株1博士:ほー、ずいぶん株式調査に慣れてきたねぇ。株初心者として基礎は十分だ。入門から中級というレベルかな。感心、感心。それで、何か分かったかね。

相場:それが全くわからないのよ。だって、決算短信の1ページ目の一番下に表記されている会社による連結業績予想を見ても、確かに営業利益は前年比で減益予想になっていたけれど、別に赤字ではなかったわ。それに、そもそも売上高予想は増収となっているので、そんなに悲観的になることではないと思うの。なぜ翌日にストップ安となったのか分からないわ。

株1博士:相場さん、今の分析の中にそのヒントが隠されているよ。

相場:えっ?!

株1博士:以前、株価は将来の収益に対する「期待」に基づいて形成されている、と言ったのを覚えているだろうか。

相場:えー、何となく。もっとも、企業の将来の収益が上がれば、株価も上がるので、その期待が高ければ株価は上がるのでしょう?

株1博士:残念ながら、実際はそこまで単純ではない。重要なのは、株価がどの程度の期待を織り込んでいるのか、ということだ。そして、そこでのキーワードは、証券アナリストの収益予想の平均値である「コンセンサス」なんだよ。

相場:コンセンサス?!

株1博士:プロの投資家は、大手証券会社のアナリストらの予想値を把握して、その平均値をコンセンサスと呼んでいる。プロの場合はBloomberg(ブルームバーグ)端末を操作すればすぐに呼び出すこともできるし、個人投資家も楽天証券マネックス証券の口座を開設しておけば、IFIS社が提供するコンセンサスを確認することができる。

コンセンサスと株価の関係

相場:へー。でも、そのコンセンサスが株価とどう関係するわけか、入門したばかりの私はまだ理解できないわ。

株1博士:簡単に言えば、会社が公表する業績予想がコンセンサスを上回っていれば株価は上がるし、下回っていれば株価は下がる傾向が強い。このあたりは、「大幅増益予想なのに株価が下落。株初心者・中級者も知っておきたいその背景」や「株価が大きく動く決算シーズンに役立つ証券会社は?」で詳しく解説しているので、相場さんも読んでみるといいと思うよ。

相場:博士、コンセンサスがわかれば、株価を占うのは簡単そうね。

株1博士:細かい特殊なケースはいずれ話をすることになるが、決算発表翌日に株価が大きく動くケースの多くは、会社による業績予想とコンセンサスの“違い”が大事だ。

相場:あら、例外もあるということかしら?

株1博士:残念ながら、例外はある。Bloomberg(ブルームバーグ)やIFISで見る数字そのものがコンセンサスとは言えないケースもあったりする。

相場:あら、なぜそんなことが起こるのかしら。大手証券会社のアナリストと言えば、プロ中のプロという印象しかないけど。

株1博士:冗談のような話だが、証券アナリストの予想の精度が低かったり(あまりにも思い込みが強いアナリストの予想はコンセンサスを乱すこともある)、業績予想をまじめにアップデートしていなかったりすることも影響したりすることもある。そういう信頼度の低い予想が含まれると、コンセンサスが乱されるのだよ。

相場:へー、そんなこともあるのね。なんか、人間らしさがでて、株初心者には身近に感じるわ。

株1博士:個人投資家の方には少し難しいかもしれないが、会社による業績見通しがコンセンサスを下回ったのに、翌日株価が大きく上昇することがある。それは、「ショートカバー」とも言われ、先物で空売りしていたポジションを買い戻すということが行われていることによる結果だったりする。銘柄によって状況は異なるので、決算分析は経験の長い証券アナリストの分析を十分に参考にするべきだと思う。

プロもストップ安になるかは事前にはわからない

相場:でも、プロの投資家は、ストップ高やストップ安になった理由はわかるのでしょう?

株1博士:もちろん、決算発表の後に、証券アナリストは決算内容を分析するので、翌日の株価の反応はおおよそ見通すことはできる。

相場:でも、個人投資家、特に私みたいな初心者にはわからないままでしょう。やっぱり、怖いわ。

株1博士Longine(ロンジン)の証券アナリストが、楽天証券に決算や新聞報道の分析や解説を「決算速報」として提供しているから、そうした情報が欲しい場合は是非一度見てみるといい。株初心者にもわかりやすく書かれているぞ(参考:「株価が大きく動く決算シーズンに役立つ証券会社は?」)。

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相場:そうした決算情報は、プロの投資家はどうのようにして入手しているの?

株1博士:決算発表後に説明会の会場で話をして決算内容の印象を伝えたりもする。証券会社のアナリストは決算説明会後にプロの投資家に自分の印象を伝えるのが一つの仕事だからな。

相場:それって、立ち話?!

株1博士:立ち話は重要じゃよ。

相場:でも、プロでも事前にストップ高になるとかストップ安になるとか察知はできないの?

株1博士:残念ながら、それはできないね。その点に関しては、株初心者と同じだよ。

相場:では、プロの運用者はそうした恐怖とどう付き合っているの?

株1博士:短期的には下がっても、下がった時に「しめしめ」と思えるような長期視点で自信を持っている銘柄を中心に保有することで、精神をコントロールできればベストだな。

相場:なるほどねぇ。プロもミスをする前提でポートフォリオを組んでいるのねぇ。参考にしなくっちゃ。

2015年5月9日 21:10 公開

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