証券会社を大きく分けると、野村證券のような大手証券(総合証券)、岡三証券のような中堅証券、全国各地に密着した地場証券、そしてネット証券の4つがあります。
野村證券などの大手証券もインターネットによる株取引のサービスを提供していますが、野村證券をネット証券と呼ぶことはまずなく、インターネット取引専門の証券会社(SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、au カブコム証券、GMOクリック証券、ライブスター証券、岡三オンライン証券など)をネット証券と呼ぶのが一般的です。
ここでは、ネット証券が普及した歴史と、ネット証券のメリット・デメリットについて解説します。
目次
1 1998年に登場し、一気に普及したネット証券
1990年代まで、個人投資家の株取引は野村證券や大和証券に代表される大手証券(総合証券)や、各地方に根付いた地場証券を通じて行われていました。個人投資家は、大手証券や地場証券の店頭に出向いて株の売買注文をしたり、担当の営業マンに電話で注文を出したりしていました。
インターネットによる株取引サービスが始まったのは1998年のことです。口火を切ったのが松井証券。間髪開けずに、DLJディレクト証券(現楽天証券)、マネックス証券などもインターネットによる株取引サービスを開始しました。こうした、インターネット経由での株取引サービスを提供する証券会社がネット証券です(オンライン証券と呼ばれることもあります)。
ネット証券の誕生から20年経過した2018年においては、大手証券とネット証券の立場は完全に逆転していて、個人投資家の株取引金額の95%以上がネット証券経由となっています。
証券会社といえば、野村證券や大和証券のイメージが強いと思いますが、下表のとおり、SBI証券、楽天証券、松井証券、GMOクリック証券、au カブコム証券、マネックス証券のネット証券6社のシェアが高く、これら6社で個人投資家の株取引金額の8割強を占めているのが現実です。
ネット証券の急速な普及の背景には、1990年代後半以降の急速な高速インターネットの普及、1999年の株式売買手数料自由化という時代の追い風がありました。加えて、いつでもどこでも取引ができる利便性、大手証券よりもはるかに安い手数料、投資情報の充実が個人投資家の支持を集めてきたのです。
2 ネット証券のメリット
ネット証券のメリットを具体的に見ていきましょう。
2.1 いつでもどこでも取引ができる手軽さ
大手証券に株を注文する場合は、店舗に出向く、あるいは営業担当者に電話することになります。営業担当者は多くの顧客を抱えているため、電話がつながらないこともあります。投資家にとって、肝心な時にすぐに注文できないのは機会の損失ですし、ストレスにもなります。
一方のネット証券。PCやスマホを使って、システムメンテナンスの時間帯以外(頻度は高くありません)であれば24時間いつでも、どこでも注文ができます。この手軽さは忙しい個人投資家の支持を集めていますし、投資の機会を逃すこともありません。
2.2 手数料が圧倒的に安い
大手証券とネット証券の株式売買手数料の差は歴然としています。下表は、大手証券で営業担当者を経由して日本株を50万円分買った時の手数料と、ネット証券各社で日本株を50万円分買った時の手数料をまとめたものです。野村証券の6,500円に対して、ライブスター証券は180円。実に36倍です。
仮に50万円の取引を10回した場合、野村證券(営業担当者経由)とライブスター証券では(6500-180)×50=316,000円もの差になります。手数料の差=利益の差ですから、手数料が安いネット証券で口座開設するのが妥当です。
大手証券とネット証券で日本株を50万円分買った際の手数料(円)
証券会社名(プラン名) | コンサル | 対面/電話/ネット | 手数料(税抜) |
---|---|---|---|
野村証券(本・支店:お店) | 6,500 | ||
大和証券(コンサルティングコース:お店) | 5,750 | ||
SMBC日興証券(総合コース:お店) | 5,750 | ||
SMBC日興証券(総合コース:電話) | 4,888 | ||
SMBC日興証券(ダイレクトコース:電話) | 4,888 | ||
大和証券(コンサルティングコース:ネット) | 4,309 | ||
野村証券(ネット&コール:電話) | 4,095 | ||
大和証券(ダイレクトコース:電話) | 4,025 | ||
SMBC日興証券(総合コース:ネット) | 4,025 | ||
大和証券(ダイレクトコース:ネット) | 1,725 | ||
野村証券(ネット&コール:ネット) | 477 | ||
マネックス証券(ネット) | 450 | ||
SMBC日興証券(ダイレクトコース:ネット) | 400 | ||
岡三オンライン証券(ネット) | 350 | ||
楽天証券(ネット) | 250 | ||
SBI証券(ネット) | 250 | ||
au カブコム証券(ネット) | 250 | ||
GMOクリック証券(ネット) | 241 | ||
ライブスター証券(ネット) | 180 |
注:取引毎の手数料を記載、各種割引・特典は考慮せず
注:2018年1月5日時点
2.3 貴重な投資情報が無料で読める
ネット証券も、立ち上がった当初は手数料が安い「ディスカウンター」にすぎませんでした。個人投資家が新聞や市販の雑誌以上の情報を得たいと思えば、大手証券頼みという状況だったのです。
しかし、ネット証券各社が顧客向けサービスの向上で競い合う中で、会社四季報、アナリストレポート、各種ニュースなど、本来有料で販売されている情報をネット証券が購入し、口座保有者向けに無料で提供するようになったことで、今や投資情報においても大手証券よりネット証券の方が便利な存在になっています。
ネット証券の口座開設は無料なので、口座を開設して情報収集に使うのも一つの手です。
3 ネット証券のデメリット
メリットの多いネット証券ですが、デメリットがないわけではありません。詳細は「口座開設の前に押さえておきたいネット証券のデメリットを徹底解説」に譲るとして、ここでは概略だけまとめておきたいと思います。
誤発注は自分で防ぐしかない
営業担当者が発注してくれる大手証券と違い、ネット証券は自分で発注をします。発注する株価、数量に間違いがないか、指さし確認をしましょう。
自分で勉強し、投資判断を下すしかない
大手証券で営業担当者を相手に取引をする場合、営業担当者があれこれと金融商品を薦めてくれます。アドバイスの良し悪しはあるにせよ、あなたのところには色々と提案が寄せられます。一方、ネット証券を使う場合は、自ら勉強し、自ら何に投資するか判断するしかありません。
PC、スマホの操作ができない場合には不向き
ネット証券の取引画面の操作は決して難しいものではないので、多少なりともPCやスマホを使っているのであれば、何ら問題ないでしょう。一方、日頃まったくPCやスマホを使わないという場合は少しハードルが高いと言えます。
システム障害リスクへの備えは必須
滅多にありませんが、証券会社のサーバーがダウンした事例はあります。また、自分のPCやスマホのトラブルが発生すると、ネット証券での取引を行うことはできません。念のため、ネット証券のバックアップサイトや電話取引の方法を事前に確認しておく必要があります。
4 まとめ
ネット証券にはデメリットもあるものの、いつでもどこでも手軽に売買ができる、手数料が安い、投資情報が充実しているという大きなメリットが個人投資家の支持を集めていることをご理解いただけたのではないかと思います。
株1ではネット証券について、様々な切り口で解説していますので、ぜひネット証券選びの参考にしてください。
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